2017-07

     本日の一言 : スマッシュブラザーズを空いた時間にやってます。ゲッコウガとロゼッタ使ってます。
     ☆仮面ライダーアルズ 第5話 デルザー軍団編 開始! 大好評 新規公開中!! 「かっと燃えるぜ正義の心
     【次回情報】 次回チャットライブは未定です。
     【出演情報】 30日(火)ハチベサさん主催 「ねるとん」 出演! 23:00- ガタラ採掘地区6759
     NEW!! 9月22日(月) ブログ記事更新!! 「今宵は大道芸語り+ヌンチャクさんの花火大会+はじめてのグラコス レポ

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仮面ライダーアルズ 第5話 かっと燃えるぜ正義の心

注:この小説は創作小説です。現存する団体とは一切関係がありません。

バックナンバーは「こちら」から! もしくは、サイドバーのリンクからどうぞ!



仮面ライダーアルズ
……Masked Rider Al-z

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第5話 「かっと燃えるぜ正義の心」

悪の秘密組織ブラックサタンによって親友を殺された城茂は!
自らブラックサタンに改造され電気人間となった!!
そして脳改造を逃れた後、ブラックサタンに復讐を誓った!!

――「仮面ライダーストロンガー」より




真名(まな)……。

彼女の名を呟いた。

その言葉は宙に霧散して、そして力なく消える。

どうしてだ。

どうしてそんなに、悲しそうな顔をする。

暗闇の向こうに立った、小さな人影。

白いワンピースに白い帽子を被った、小柄な女の子。

知っている。

あの子は、真名。

俺の大切な人だ。

なのに何故……何故お前は……。

そんな顔で、恐怖と悲しみで引きつった、不思議な顔で俺を見るんだ。

手を伸ばす。

その手はどんなに伸ばしても、真名に届くことはない。

この距離からでも分かる。

俺は、彼女に拒絶されている。

その事実に気づいた時、目の前が真っ暗になった。

真名、聞いてくれ。

俺は……。

……俺は……。

…………誰だ?

愕然とした。

自分の名前も、思い出せない。

俺は……一体。

何だ?



「実験体のサイキックウェーブ、急激に増大しました! これ以上の投薬は、チャンバーが保ちません!」

悲鳴のような研究者の声を聞き、椅子に座って長い足をテーブルに乗せていた城が顔を上げた。

彼は咥えていたタバコを指で摘み口から離すと、フーッ、と煙を吐いた。

「いざという時の責任はすべて俺が取る。実験は続行だ」

「しかし!」

「デルザー軍団にこのオーバーテクノロジーが渡る前に、何とかして解析して『処分』しなければいけない。お前らはその解析が仕事だ。分かるな?」

「ジョー司令、想定していたサイキックウェーブ出力を大幅に超えています。この実験体のサイキック反応は強すぎる! これ以上投薬すれば、何が起こるか……」

「暴走か。それを恐れてるわけだな」

城はククッと小さく笑ってから、足を翻して立ち上がった。

そして椅子にかけていた上着を手に取り、肩にかける。

「問題ない。『あれ』にはその心配はねぇよ」

「は……それはどういう……」

「そのために調整された個体だからな。報告を聞くと、風見さん達はどうやら、壮大な勘違いをしてるようだが……」

誰にともなく呟き、城は制止する研究員達を押しのけて、出口に向かって歩き出した。

「それをいちいち説明してるほど、俺は暇じゃないんでね」



「どうした? 食わないのか。体の8割が機械とはいえ、お前の体にはまだ血が通っている。食事の機能もあれば、脳が空腹を訴え続ると憔悴するぞ。有機物のパーツは消耗するからな。食べ物からそれを摂取する必要がある」

呼びかけられ、正彦は歯をかんで顔を上げた。

その目には、明らかな強い憎悪の感情が宿っていた。

睨みつけられ、ガッツはポリポリと指先で頬を掻き、手に持ったサンドイッチを口に運んだ。

「食わなければ、強くなれん。強くなれないということは、永遠に俺を殺せないということだ。それでもいいのか?」

淡々とそう言われ、正彦は目の前に置かれた食事のトレイを見下ろし、ゴクリと唾を飲んだ。

そしてパンを手に取り、口に思い切り詰め込む。

ガッツは、ものすごい勢いで食事を始めた正彦から少し離れた場所に立っていた。

デストロン壊滅から一週間。

正彦は、USシティの駐屯基地に軟禁されていた。

しかし軟禁と入っても、自由に外に出られないだけで、身体検査などは最小限のものだった。

ガッツの部屋に閉じ込められているのだが、彼の部屋は広いトレーニングルームのようになっていた。

とても軍人の部屋とは思えない。

それというのも、壁の至るところに、ジャパンシティ産だと思われるヒーローもののキャラクターのポスターが貼ってあったからだった。

喉にパンを詰まらせ、水で流し込んだ正彦がその一つに目を留める。

ガッツはスポーツドリンクを口に運んでから、巨大なバーベルを、片手で軽々と持ち上げた。

軽く見積もっても、百キロは超えている物体だ。

唖然とした正彦に、彼は無骨な表情を感じさせない顔で言った。

「俺は、ジャパンのヒーローが好きでな。創作ものもあれば、本物もいる」

「…………」

「例えば、それだ。お前の脇に貼ってあるポスター」

釣られて目をやった正彦の目に、緑の複眼に、カブトムシのような角を持った、アメフト選手に似たアーマーを纏った男が描かれたポスターが映った。

「最強の改造人間だ。力も技も、それは勿論のこと。だが、何より最強なのは……」

「随分持ち上げるじゃねぇか、ガッツ」

プシュ、と音がして自動で扉が開いた。

そして三十代後半程の、目付きの悪い男が中にズカズカと入ってきた。

身構えた正彦の前に、軍服のポケットに手を突っ込んだまま仁王立ちになり、彼は鼻を鳴らした。

「お前が拾ったと聞いて見に来たが。何だ……ジャリか。それもチビだ」

「な……何だお前!」

正彦は反射的に大声を上げた。

頭の中の何かが、彼に告げていた。

本能だろうか。

おそらくそれに近いものが、正彦の幼い心を叩いた。

この人は、危険だ。

半ば瞳孔が開いたような、妙に力がある目で彼は正彦をしばらく見回してから、身を屈めて、彼の食事トレイに乗っていたパンの一つを手にとった。

ゴツゴツした手には白い手袋が付けられている。

パンを口に運んでから、彼はガッツの方を見上げた。

「おいガッツ。飲み物くらい出せ」

「了解しました、司令官殿」

ニヤリと笑って頷き、ガッツは彼に、床に置いてあった携帯水筒を投げて渡した。

「司令官……?」

呟いた正彦に、水筒の中のスポーツドリンクを喉に流し込んだ彼が頷いて口を開く。

「俺の名は城茂。国連軍のUS駐屯部隊、その司令官をしている」

「お前が……お前たちが……」

正彦の脳裏に、無残に胸を貫かれる母の姿がフラッシュバックした。

「うああああ!」

次いで彼は絶叫し、トレイを蹴立てて立ち上がった。

何も考えずに殴りかかった正彦の拳を首をひねって避け、城はしゃがみこんだ姿勢のまま軽く正彦の手を掴んで、クイ、と捻った。

それだけの動作で、正彦の体が宙を舞った。

天井まで吹き飛ばされ、少年は背中から叩きつけられた。

そして自由落下して床に転がる。

胸を打ったのか、激しく咳をしている正彦を呆れたように見てから、城は服のシワを直して立ち上がった。

「悪ィな。たとえジャリであれ、向かってくる奴には容赦しねえことにしてるんだ」

「子供とはいえ改造人間です。侮ってはいけませんな」

ガッツが含み笑いをしながらそう言う。

視線を戻した城の目に、床をえぐるほどの力で足を踏み出し、雷の如き勢いと、殺気で肉薄した正彦の姿が映った。

「へぇ……」

少し感心したように呟いて、城は正彦が何も考えずに付きだした拳を、ひらりと後退して避けた。

そして軍服のポケットに手を突っ込んで、ポケットハンドの姿勢のまま、ひらひらと正彦の突き出す拳を避ける。

正彦は、デストロンに改造された改造人間である。

その拳が、簡易コンクリートの壁に突き刺さり、半ばまでめり込む。

繰り出された足が空を切り、床に打ち当たって放射状の衝撃痕を広げる。

城はしばらく正彦による破壊を、その攻撃を避けながら見ていたが、やがてふぅ、と息を吐くとポケットから右手を抜いた。

そして人差し指を伸ばして、トン、と正彦の額を叩く。

途端。

バヂィ! というスタンガンででも撃ったかのような衝撃が、正彦の体を襲った。

「うっ……!」

呻いて、正彦はその場に崩れ落ち、そのまま流れるように意識を失い、力なく床に横たわった。

「ふーん……中々スジがいいな」

「でしょう? 一週間ずっとこの調子です」

ガッツがニヤリと笑い、倒れた正彦を担ぎ上げる。

そして粗暴にベッドに投げ落として、毛布をかけた。

「だが……ガッツ。友人としてお前に忠告するが」

城はタバコを取り出し、口に咥えた。

そしてパチンと指を鳴らして、それに火をつける。

「憎しみに染まったガキ程、厄介なもんはねえ。俺達は正義を執行する者だ。守るべき者から憎しみをもらうことはない」

「…………」

「俺は、このジャリを殺しておくことを勧めるがね」

「司令。分かってるでしょう?」

ガッツは腰に手を当てて、軽く笑った。

「俺たちアメフト仲間は、脳みそまで筋肉で出来てるってことを」

「成る程」

煙草の煙を吐き出し、城は笑い返した。

「確かに、お前も俺も、馬鹿だもんな」



「新生デストロンは壊滅したか……」

暗い、地下室のような空間に、低くよく通る声が響いた。

そこにいたのは、十二人の男女。

三角形に尖った黒い覆面を被り、体は黒いマントで覆われている。

一人がクックと喉を鳴らして笑った。

「一人で出てった鋼鉄参謀は馬鹿だったからな。俺なら『もう一度』ストロンガーに敗れるようなヘマはしねぇ……」

「ふん……影でのらくら言うようなことなら、赤子にだってできるわ」

その隣にいた女性が口を開くと、笑った男は椅子を蹴立てて立ち上がった。

「何だと! お前、俺が鋼鉄より弱いとでも言いてぇのか!」

「それはそれは……私から見れば、あんたら脳筋男は、どれも同じに見えるがね」

「やめないか、二人とも」

一人男が手を上げて二人を制止する。

「新生デストロンは壊滅した。これは確かだ。私達『新生デルザ―軍団』は、奴らデストロンの壊滅を真摯に受け止め、敵に対処していかねばならない」

「でもよぉ~、ジェネラルシャドウ。デストロンが壊滅したって言ってもよ、奴らはオレたちと比べてさ、その、『弱い』じゃん? いつかはこうなると思ってたぜ。俺は」

別の男が馬鹿にしたように手を広げて言うと、周りはそれに同調するように、喉を鳴らして笑った。

ジェネラルシャドウと呼ばれた男は、ため息をついて、上座に座っている男の方を向いた。

「悪魔元帥。この度の鋼鉄参謀の敗北をどうお考えですかな?」

「…………」

声をかけられた、悪魔元帥と呼ばれた男は、しばらく沈黙した後重苦しく口を開いた。

「……我らは前のデルザー軍団ではない。諸君らの戦闘力は、以前の仮面ライダーストロンガーなら一蹴できるほどの力があるだろう。勿論、個々での話だ」

周りを見回し、悪魔元帥は続けた。

「しかし、仮面ライダーもまた我らと同様進化する。鋼鉄参謀は、新造されたライダーの破壊に単独で赴き、失敗したとも聞く」

「ククク…………」

そこで、少し離れた場所に座っていた男が口を開いた。

「敵を倒したいなら、まず自分達の団結力を見直したらどうだ? 元帥」

パキィッ、と音を立て、彼……二十代半ばほどの端正な顔つきをした青年は、右手に持っていたクルミの実を、片手で粉々に砕いた。

彼だけ覆面とマントを着用していない。

ジーンズに、白シャツというラフな姿。

そして肩まで伸びた長髪が目立つ、美青年だった。

彼は床に足を投げ出して腰を下ろしていたが、左手でクルミの中身をつまみ、口を開けて落とした。

それを咀嚼しながら立ち上がり、パンパンと手を払う。

「結城正儀(ゆうきまさき)。悪魔元帥の御前だ。頭が高いぞ」

ジェネラルシャドウに語気を強く注意されるも、正儀と呼ばれた青年はバカにしたように肩をすくめ、十一人の男女に背を向けた。

「俺は、あんたらの仲間になったつもりも、部下になったつもりもないんでね。悪いが、好きにやらせてもらう」

「貴様ァ……人間風情が!」

男のうちの一人が、手にしていた鎖を、間髪入れずに正儀に向けて投げつけた。

一直線に飛来した鎖を、正儀は振り向きざま手で掴んだ。

そして

「フンッ!」

と気合を入れてそれを捻り上げる。

一瞬後、その鎖はザァァァ……と乾いた音を立てて砂と霧散し、宙に飛び散って消えた。

「…………」

それを見た十一人の男女の間に、緊張が走った。

殺気をむき出しにして、明らかに様子がおかしい雰囲気の者もいる。

「だが……その新しい『兵器』、国連軍の新仮面ライダーとやらには興味があってね。無用な兵器は破壊するべきだと思っている」

暗い表情の奥に、どこか狂気を宿した正儀は、目だけを妙にギラつかせながら笑った。

「過ぎた力は、正しく使わなければ悪となる。その点では、俺はあんた達に期待してるんだぜ? その期待を……」

手に残った砂を振り落とし、彼はポケットに両手を突っ込んで、出口に向けて歩いて行った。

「裏切らないでくれよ。化け物ども」

「…………」

それを黙って見送っている悪魔元帥に、ジェネラルシャドウが問いかけた。

「いいのですか? 好きに動かせてしまい……」

悪魔元帥は少し考えてから、静かに言った。

「良い。結城の件については全てを不問とする」

歯を噛んで、先ほど鎖を投げつけた男が一歩下がる。

「奴には利用価値がある。我らのプロジェクトには、欠かせない存在だ。そして何より……」

小さく笑いながら、悪魔元帥は続けた。

「奴は裏切らん。自分の『正義』のためにな」



すさまじいイビキが、部屋の中に響いていた。

正彦は目を閉じていたが、やがて眠るのに失敗して、毛布を跳ね除けて起き上がった。

「あああ! うるさい!」

大声でガッツを怒鳴りつける。

その瞬間、ガッツのイビキは止んだが、やがて数秒経つと元通りに、すさまじい音量で響き始めた。

正彦はうんざりした顔で、靴を履いて立ち上がった。

毎晩こうだ。

少し離れたベッドに大の字になって眠っているガッツ。

憎い。

お母さんの仇。

殺してやりたいほど憎いのは現実なのだが、あいつは強い。

それはこの一週間の間に、痛いほど分かっていたことだった。

眠っているところを襲撃したことがある。

しかし、半ば眠っている状態で叩き伏せられてしまい、むしろ手加減がうまくできなかったようで、手痛い反撃をもらってしまったのだった。

寝ている時には手出ししないほうがいい。

そう思って耐えていたのだが、こううるさくてはおちおち眠ることもできない。

しかし、正彦には、ガッツの真意がどうしても読めなかった。

どうしてあいつは、僕を殺さなかった?

お母さんを、あんなに躊躇なく殺しておいて。

お父さんも、見ていないが多分あいつが殺したんだ。

なのにどうして僕を保護するんだ?

保護というよりは、むしろ本当の子供のように、手厚く守っているようにも見える。

あいつは悪い奴で。

血も涙もない軍人じゃないのか?

それを考えると、心の奥にもやもやが浮いてきて、居ても立ってもいられない気分になるのだった。

ガッツはどこか抜けているところがある。

正彦は閉じ込められてはいるのだが、建物の窓が鍵もかからず空いていることには気づいていた。

ガッツを殺せなかった時。

あいつのイビキがうるさすぎる時。

そして、心のもやもやがどうしても取れない時。

正彦は窓から抜け出し、US駐屯基地の屋根に出て、夜風に当たることにしていた。

屋根の上に降りて、風を体で受ける。

背後からガッツのイビキが聞こえてくる。

殺してやりたいほど憎い。

憎いはずなのに……。

何故だろう。

憎みきれない自分がいる。

屋根の上を歩いて、先端部分に向かう。

どこまでも広がる砂漠の、オアシス部に基地は立っていた。

背後には、ジャパンシティの何倍もの大きさがあるUSシティが建っている。

スラム街の大きさも、規格外だ。

逃げることもできた。

できたが、正彦の目的はガッツを殺すことだ。

そしてあわよくば……。

あの、高飛車な嫌な奴……。

城茂も、一緒に……。

そこまで考えた時、正彦は足を止めた。

いつも月を見上げているところに、先客がいたからだった。

「……あ……」

情けない声が出た。

あわよくば一緒にぶち殺してやろうと思っていた男。

城茂が、無防備にタバコを吸いながら横たわっていたからだった。

城は首だけひねって正彦を見ると、フーッ、とタバコの煙を吐いた。

「何だ……ジャリか」

興味がなさそうに呟き、また月を見上げる。

フリーズしていた正彦は、やがてふつふつと沸き上がってきた怒りを抑えることができずに、歯を噛んで足を踏みしめ、声を上げようとして……。

「あーあー、やめておけ。よーく分かっていることだろうが、今のお前では俺達は殺せん。それに、戦闘態勢に入るまでが長すぎる。戦いを選ぶんなら、常に精神は臨戦態勢にしておけ」

ひらひらと手を振った城の声に、足を止めた。

言い知れぬ悪寒。

殺気。

一瞬だけだが、それが城の方向から発せられ、正彦にとっては形容する言葉が見つからない「危険信号」を察知し、彼は動きを止めたのだった。

「へぇ……」

それを見て、城は体を正彦の方に向き直らせて、その場にあぐらをかいた。

「やっぱ筋がいいね、お前。天性のもんか」

「あんた……」

正彦は歯を噛んで、ぐっと言葉を押し殺した。

そして両手を握りしめ、震える背中を城に向ける。

ダメだ。

今の自分じゃ、こいつは倒せない。

本能的な部分でそれを痛いほど感じてしまったのだった。

「戻っても、ガッツのイビキで寝れねえだろ?」

笑ってそう言われ、足を止める。

「どうした? こっちに来いよ。別にお月様は観覧料をとったりはしねぇからよ」

城が手招きして、正彦を呼ぶ。

少年は、ポカンとそれを見つめ、長い間考えた末、ゆっくりと足を踏み出した。



少し離れた場所に座った正彦に、寝転がりながら城は口を開いた。

「どうだ? ガッツをぶっ殺す作戦は上手くいきそうか?」

「…………」

無言で自分を睨みつけてきた正彦に笑いかけ、城は続けた。

「まぁ、仲良くしようや。昼間ふっ飛ばしたのは謝るよ。抑えが効かないタチでな」

「人殺しめ……」

正彦は押し殺した声で呟いた。

「お前達、絶対許さないからな……」

「ハハッ、それならそれでいいさ」

正彦の憎しみの呟きに返ってきたのは、意外にもそれを「肯定」する声だった。

目を見開いてこちらを見た正彦に、城は肩をすくめて言った。

「だって、それはお前が解決しなきゃいけない問題だからな。俺からどうこうは言えねえ。お前がよく考えて、ガッツや俺を、それでもなおかつぶっ殺さなきゃ気がすまねえっていうんなら。俺はそれでいいと思うよ。出来るか出来ないかは、別問題としてな」

「…………」

「だが、これだけはよく覚えておくといい」

城は立ち上がると、月に向けて右手を高く掲げてみせた。

「俺は城茂。『仮面ライダーストロンガー』だ! 誰が何と言おうが、俺は俺の行動に誇りを持っている。ガッツも同じだ。俺達は微塵も間違ったことはしていねえ」

「…………」

「そして俺達が、その『心の誓約』を破った時。それは俺達の心が死ぬということだ。だが決して俺達の心は折れねぇ。そう、折れねぇんだ。二度とな」

手を降ろし、彼は正彦を真っ直ぐ見つめた。

「お前達子供には、俺はそういう大人になってほしいと願っている」

正彦はだいぶ長いこと、城の顔を見つめていた。

やがて声を発しようとして……。

そこで、駐屯基地の入口で大爆発が上がったのを見て、反射的に身を縮めた。

真っ赤に燃えた空気の照りを真正面から浴びて、城は腕組みをしてニヤリと笑った。

「来たか……デルザー軍団。この反応は一匹じゃねぇな……いい機会だ、ジャリ。ガッツをぶっ殺す手伝いをしてやる!」

「え……?」

「実戦ってもんを、その平和ボケした目に見せてやるって言ったんだ。耳の穴もかっぽじって、よーく感じろ!」

城はそう怒鳴ると手袋を脱ぎ捨てた。

そこから現れたのは、コイル状になった機械の腕だった。

彼は両手をゆっくりと天に向けて掲げた。

「変ッ身……」

そして体の左側に両手を持ってきて、左手を右手で勢い良く擦る。

「ストロンガー!」

正彦の目に、網膜が焼けるのではないかというくらいの強烈な放電が飛び込んできた。

雷が落ちたと錯覚した程に、すさまじい黒焦げが辺りに広がる。

その中心に、白い煙を上げながら、一人の「仮面ライダー」が立っていた。

「ついてくるもこないもてめぇの自由だ! 俺は行くぜ!」

彼はそう怒鳴った。

緑の複眼。

カブトムシのような角。

赤いプロテクター。

そして、白いマフラー。

ガッツの部屋に貼ってあったポスターそのもの。

最強の改造人間。

仮面ライダー、ストロンガーが立っていたのだった。

彼は雄叫びをあげると、遥か下の地上に向けて身を躍らせた。

正彦は少しの間躊躇していた。

しかしやがて唇を噛むと、ストロンガーを追って地面を蹴る。

彼の小さな体は、次の瞬間空中に飛び出した。



「ナンバーゼロと司令はまだか!」

「くそっ、無線が通じない……うわああ!」

あたりを揺るがす地震のような衝撃。

地面に放射状に、クレーターのような衝撃痕が広がった。

そこから鮮血が飛び散る。

返り血でベトベトに濡れた顔面を怪しく光らせ、その男……「岩石男爵」は、ぬぅっ……と鈍重そうに二メートルは軽く超えている巨体を動かした。

衝撃痕は、岩石男爵が落下した際のボディプレスにより発生したものだ。

その下敷きになって、黒いボディスーツを着た軍人達が倒れている。

岩石男爵……その醜い顔は、まるでケロイドのように岩がところどころ張り付いているものだった。

体にも岩が張り付いている。

彼は握りこぶしを作ると、長大なナイフを手におどりかかった軍人達を、一振りで凪ぎ飛ばした。

「クワー!」

そこで空中から、すさまじい速度で一人の「人間」が降ってきた。

否。ヒトではない。

顔面が猛禽類……ワシの顔をした男。

荒ワシ師団長だ。

彼は倒れかけた軍人に、手にした斧を振りかぶり、力の限り叩きつけた。

袈裟懸けに斬られた軍人が、鮮血を吹き上げながらもがき、倒れる。

「おいおい、ゲームの一番手は岩石じゃなかったのか?」

ズボンのポケットに手を突っ込んで、頭部に檻のような鉄の囲いを付けた、猛獣、狼の面をした男が、猫背で歩きながら口を開いた。

狼長官である。

三体のデルザーは、間に妙な緊張感を挟みながら動きを止めた。

「関係あるか。一番最初にストロンガーを殺すのはこの儂だ」

荒ワシ師団長がバカにしたように言う。

「へへ……なら、俺も黙っちゃいられねぇな!」

狼長官がそう言って、手にした尖ったステッキを振りかぶり、飛びかかってきた軍人に投げつける。

それは一直線に軍人の胸を貫き、やられた男はどう、と倒れた。

「き、きさまら。やくそく、ちがう。て、だすな!」

両拳を握りしめ、岩石男爵が大声を上げる。

それに、ステッキを拾い上げた狼長官が嘲るように答えた。

「結局はやったもん勝ちってな。何なら、今ここでてめーら二匹、まとめて始末してから、ストロンガーを殺ってもいいんだぜ?」

「なに?」

「何じゃと……?」

岩石男爵と荒ワシ師団長の顔色が変わる。

地面に降り立ち、荒ワシ師団長は斧を狼長官につきつけた。

「訂正しろ。お前が、儂らより強いとな」

「事実だ。訂正のしようがねえよ」

クックと喉を鳴らして言った狼長官に、岩石男爵が振り上げた腕を、一気に振り下ろした。

狼長官が飛び退ってそれを避ける。

対象を失った巨大な腕が、地面にぶちあたり衝撃痕と、砂煙を吹き上げた。

「チィ。単細胞が……!」

「こ、ころす。じゃまするやつ、み、みんなてきじゃ……!」

岩石男爵がボソボソと呟く。

その時だった。

「電ンンンン! パンチィ!」

白い閃光が三体の間を駆け抜け、狼長官の胸に吸い込まれた。

地面が一直線に真っ黒に焦げている。

仮面ライダーストロンガー、城茂が、真っ白に帯電しながら目にも止まらない速度で駆け抜け、狼長官に拳を叩き込んだのだ。

狼長官は立ったまま後ろにスライドすると、数メートルも後退して止まった。

その胸が真っ黒に焦げているが、本人は至って気にしない風にそこをパンパンと手で払った。

「ダイナモを使わないと通じないか……」

「おお~誰かと思えばストロンガーじゃないか」

狼長官が両手を広げて楽しそうに言う。

その瞬間、荒ワシ師団長と岩石男爵の顔色が変わった。

彼らは地面に足を固めたストロンガーに向き直ると、クックと喉を鳴らして笑ってみせた。

「結局俺たちデルザーは、てめぇを倒すために存在している。誰が最初とか、後とか、『現物』目の前にしちゃ意味ねぇ議論だな」

狼長官が低い声で呟くように言う。

デルザー軍団の三体が、城を囲むようにじりじりと移動した。

包囲された形になった城は、空を見上げて舌打ちをした。

視線の先には、空に燦々と輝く満月。

狼長官はニヤァ、と裂けそうなほど口を開いて笑った。

「気づいたようだな。満月のプラズマを吸収した俺に、今のてめぇじゃ勝ち目はないってことをな」

バチッ……と狼長官の体から青い放電が走った。

プラズマ。

彼は、それを発生させることができる改造人間だ。

勿論ストロンガーは、体内に埋め込まれた超電子ダイナモの力で、さらに強力な姿に二段変身することができる。

しかしそれには時間制限がある。

一分を過ぎると、体が負荷に耐え切れず爆発。

そう、二段変身「チャージアップ」は、諸刃の剣なのである。

チッチッと指先を振り、荒ワシ師団長が笑った。

「お前はこう考えている……儂ら三人を、チャージアップの一分間に仕留めることができるのかとな」

「ゲッゲッゲ……」

岩石男爵も不気味な笑い声を発した。

「無理じゃな」

「ああ、無理だ」

「ゲゲゲ……」

三体が続けて口を開く。

城はそれを黙って聞き、構えを作った。

「どうしたストロンガー。待ってやっているんだ……早くチャージアップしたらどうだ?」

狼長官が挑発するように言う。

城はしばらく黙っていたが、やがてクックと喉を鳴らした。

そして心底面白そうに、大声を上げて笑い出す。

そして右手を天に向けて高く伸ばした。

「天が呼ぶ! 地が呼ぶ! 人が呼ぶ!」

彼の朗々たる声に、倒れていた軍人達が、血反吐を吐きながら顔を上げる。

「悪を倒せと俺を呼ぶ! 聞けィ! 悪人共!」

「クッ……」

無視された形になった狼長官が、顔を歪める。

「俺は仮面ライダーストロンガー! 貴様ら外道共の指図は受けん!」

「そうか。なら死ね!」

荒ワシ師団長が斧を振りかぶって襲いかかる。

その時だった。

すさまじいエンジン音と共に、瓦礫を踏み越えて巨大なバイクが現れた。

時速にして二百キロは軽く出ているだろうか。

視認さえも難しい速度で、それは荒ワシ師団長に前輪から突き刺さった。

跳ね飛ばされた荒ワシ師団長が、よく分からない青い液体を吐き散らしながら吹き飛んで、地面に突き刺さる。

ゴロゴロと転がったそれに、数十メートルもスライドして止まったバイクの上から、巨体が躍りかかった。

「先程の言葉をそのまま返すぜ、狼長官」

ストロンガーが嘲るように言う。

「百裂拳! 死ねえええ!」

咆哮を上げながらガッツが、無数の拳を荒ワシ師団長に叩きこむ。

「ゲバァァ!」

変形した頭部で、荒ワシ師団長はよろめいて、たまらず空中に飛び上がった。

「俺達を殺す? ……無理だね」

「チェンジコード! フライングアームド!」

ガッツが右腕につけた腕時計のようなものに向けて叫ぶ。

そこで、鈍重なバイクが独りでに動いた。

ライトが周囲をまばゆく照らし、車体が起き上がる。

そしてガパァッ! と胴体部分が開いた。

人が一人入れそうな空間がある。

ガッツがそこに背中から滑りこむと、バイクが所々変形しながら彼の体にまとわりついた。

数秒後、真っ黒な鎧のように変わったバイクをまとったガッツの背中、そこに装着されたエンジンが点火し、真っ赤な火を吹いた。

「ジェット昇竜ゥゥゥ! アッパー!」

一本の光の線のようになった、最大出力で空中に向けて吹き飛んだガッツの拳が、荒ワシ師団長の胴体を貫通し、粉々に吹き飛ばした。

空中で分解された荒ワシ師団長の胴体が、動力炉から大爆発を上げる。

ズゥン……とストロンガーの背後に降り立った、全長三メートルはある鎧をまとったガッツが、ファイティングポーズを作った。

「司令、すまん! 遅れた!」

「丁度今始まったところだぜ。戦いの狼煙を盛大に上げたな」

淡々と言った城に、仲間が爆死したというのに、顔色一つ変えない狼長官と岩石男爵が、それぞれ戦いの構えをとった。

「ナンバーゼロか……オーバーテクノロジーによる兵器人間。まさかバイクが装甲になるとは、知らなんだ」

狼長官が押し殺した声を発すると、城は肩をすくめて見せた。

「知ってるわけがねぇ。これが初運用だからな」

そして城は狼長官を指さした。

「そして誰もこれからも知ることはない。何故ならてめぇら二匹、ここで葬られるからだ」

「奇襲で荒ワシをぶっ殺したくらいで調子に乗るんじゃねぇぞ。電気人間が」

「進化のねぇプラズマ狼が。かかってきな」

クイッ、と指先を曲げて城が狼長官を挑発する。

対して、向き直ったガッツが、ためらいもなく装甲をきしませながら、岩石男爵に躍りかかった。

岩石男爵が手を伸ばし、同等サイズの大きさになったガッツの両腕を掴んで止める。

「胸部カッター全開! 大・切・断!」

ガッツが叫ぶと、バイクの胸部に当たる装甲がバクッ、と開いて、中から回転する楕円形のチェーンソーが飛び出してきた。

それに頭部から腰までを真っ二つに切断され、岩石男爵がよろめく。

チェーンソーが胸部に収納され、とどめを刺そうとしたガッツだったが、その腕が止まった。

両断されたはずの岩石男爵が、両腕でそれぞれ離れようとする自分の体の端を掴み、押し戻したのだった。

切断面が溶けるように接着され、数秒も立たずに元に戻った彼が、ガッツの頭上に腕を振り下ろす。

すさまじい衝撃がガッツを襲い、彼の足元に放射状に打撃痕が広がった。

「お、おまえ……じゃまだな……」

「ジーザス……!」

一撃でガッツの纏っているバイク鎧の各部から火花が散り始めた。

「始まったな……俺達もおっ始めるとしようぜ」

首の骨を鳴らした城に、狼長官はくぐもった低い声で返した。

「舐めるなよ……」

バチバチバチと音を立てて青白い放電が空中に走る。

「舐めてないさ。馬鹿にしてるだけでな!」

城はそう叫ぶと、地面を蹴り真っ白い閃光となった。

「電ンンンンンン! キィィィィック!」

雄叫びとともに放たれた真っ白い光の蹴りを、狼長官は両腕で受けた。

青白い放電と白い放電がぶつかり合い、周囲に雷のような電気、プラズマの入り混じったモノが降り注ぎ始める。

「貴様の電気技など……効くかよォ!」

青白い光と化したステッキを振りかぶり、狼長官はそれで城を殴りつけた。

左手でそれを受けた城の、ステッキと接触した部分が大爆発を上げた。

「グゥッ……!」

吹き飛ばされて地面を転がった城に、狼長官が地面を蹴り落下の勢いそのままに飛びかかる。

「プラズマァァ!」

絶叫とともに放たれた青白い、直径五メートルはある巨大な雷が、城を直撃した。

一瞬彼の体が見えなくなり、地面に円形の穴が土煙と共に出現する。

その中心で、プラズマが収まった後、真っ白い煙を体中から上げた、黒焦げになったストロンガーが、ふらりとよろめいた。

しかし彼は地面を踏みしめ、またしっかりと立つと、体中から白い煙を吹き上げながら、落下してくる狼長官に向けて拳闘の構えをとった。

「ジャリ! 見てるか!」

数十メートル離れた瓦礫の端に隠れていた正彦に向かって、城は叫んだ。

「敵に弱みは一切見せねぇ! それが! 男ってもんだ!」

風が吹いた。

マフラーを宙にたなびかせて、仮面ライダーストロンガーは地面を蹴った。

「電キィィック!」

空中で体勢を反転させ、城は青白い光となって突撃してきた狼長官と、足先で激突した。

爆音とともに周囲に白と青の光が吹き上がり、拡散する。

ストロンガーの姿がそこで真っ赤に発光した。

「チャージアップ!」

「月よぉぉ!」

狼長官も呼応するように叫ぶ。

目が焼けるほどの青い光が、狼長官の体から発せられた。

「超電子ィィィィィ!」

城はそう叫ぶと、空中でグルグルと体を回し、足を青白い光の塊に向けて叩きつけた。

大爆発が上がった。

狼長官の体が青白い雷となって地面に突き刺さる。

土煙を切り裂くように、そこに真っ白い閃光となったストロンガーが飛来した。

「稲妻ァァァァ!」

「チィィィィ!」

狼長官が絶叫して、手にしていたステッキを城に向けて投げつける。

しかしそれは、城の体に突き刺さる寸前で、ジュッと蒸発し霧散した。

「キィィィィィック!」

狼長官の頭を消し飛ばし、ストロンガーは数十メートルも地面を滑り、そして止まった。

ストロンガーの発光が収まり、体の色が元に戻る。

頭部を失った狼長官は、しばらくふらふらと揺らめいていたが、やがてその体からフッ、と光が消え、倒れた。

次いで炎の柱を吹き上げて爆裂する。

辺りに、昼かと見間違うくらいの閃光が広がった。



「ふん……単細胞の馬鹿共が。やはり任せてはおけないか……」

少し離れた高い場所で、腕組みをして一連の戦いを睨むように見つめていた男……結城正儀が呟いた。

彼は乗っていたバイクの後部座席を開き、そこから青いヘルメットを取り出した。

目までを覆う形になっていて、目の部分には赤い複眼。

そう、仮面ライダーの口から上の部分が、そのヘルメットには造形されていた。

「ハァ!」

気合の声と共に、結城はそのヘルメットを天に掲げ、頭に勢い良くはめた。

一瞬、周囲に白い光が走った。

それが結城の体に纏わり付き、黒いスーツを形成する。

仮面ライダー。

しかし、口元を覆うクラッシャーの部分がなく、生身の口がむき出しになっている。

銀色のフィストガードをきしませ、黄色いマフラーをたなびかせながら、結城はクックと小さく笑った。

それは、どこか影を感じさせる暗い笑みだった。

「軍のオーバーテクノロジーは過ぎた玩具だ。破壊しなきゃな」

彼はバイクにまたがると、エンジンを吹かし、一気に眼下の戦いの場に飛び込んだ。



「何だ……この反応は……」

チャージアップが終わり、肩で荒く息をしたストロンガーが、顔を上げて呟く。

「丈二さん……?」

視線の先に、大型バイクを駆ってこちらに突撃してくる、一人の男の姿。

城は複眼を光らせながら、立ち上がった。

「この反応は間違いない! 丈二さんだ。だが、あの人はもう……」

岩石男爵と組み合っていたガッツが、アームドバイクをきしませながら、巨大な腕を振り上げ、男爵の頭に叩きつけた。

青い液体を吐き散らして、首が折れたのか、岩石男爵はよろめいてズゥン……と倒れた。

しかしその瞳はすぐに生気を取り戻し、首の骨もパキパキという乾いた音を立てて再接合される。

「不死身か……!」

「し、しね……!」

起き上がった岩石男爵が、ガッツに向けて体を丸めて強烈なタックルをする。

しかしガッツはそれを真正面から受け止めると、各部から火花が散っている鎧の中でニヤリと笑った。

「俺にアメフトを挑むとは……嫌いじゃねぇな! そういうの!」

振り上げたガッツの腕、その肘の鎧の部分から炎が噴射された。

「ロケットォォォ!」

そう、まるでロケットのように。

ガッツの拳は目にもとまらない勢いで岩石男爵の頭部に吸い込まれた。

「パァァァアンチィッ!」

振りぬいた拳の先で、バァァン! と岩石男爵の頭が爆裂する。

「再生する暇は与えん!」

ガッツは雄叫びを上げて、頭部がなくなってもまだ立っている岩石男爵の体を掴むと、思い切り上へと放り投げた。

鎧の背部ブースターが点火し、彼は一瞬で投げ上げた岩石男爵よりも上に吹き飛んだ。

「ライダァァア!」

再生を始めた岩石男爵の頭部。

その崩れた顔面の目が見開かれる。

「ジェット! キィィィック!」

光の線になって突き刺さったガッツと岩石男爵が、地面に激突する。

打撃痕のみならず、砂煙を吹き上げ、その中心にいた岩石男爵の動力炉が潰れたのか、一瞬後、天を衝く大爆発が上がった。

それを背に、起き上がったガッツがストロンガーの方に歩き出す。

「司令、片付きましたぜ。他には……」

「いかん! ガッツ、避けろ!」

城が慌てて大声を上げる。

顔を上げたガッツの目に、こちらに向けて突進してくる大型バイクの姿がうつった。

「何ィ……!」

乗っていた男がボタンを操作すると、バイクの前面に、巨大な銛のような刃が競り上がった。

その凶悪なモノを、先ほどガッツが荒ワシ師団長にしたように、猛烈な速度のまま突撃し、ガッツにぶち当てる。

「うおおお!」

思わず声を上げたガッツの鎧、その胸部装甲が粉々に砕け、銛がガッツの胸に突き刺さった。

「ぐ……!」

呻きながら彼は後ろに吹き飛ばされた。

バイクに乗っていた男は、ペダルを蹴って飛び上がると、空中を軽業師のように回ってそこから離れた。

そして地面に着地し、手にしていたリモコンのスイッチを入れる。

次の瞬間、突撃したバイクが真っ赤に発光し……大爆発を上げた。

ガッツが空中に跳ね上げられ、白い煙をたなびかせながら弧を描いて、受け身も取れずにドチャリと地面に崩れ落ちる。

アームドバイクは胸の部分が完全に潰れて、計器類がむき出しになり、放電が至る所から漏れていた。

ガッツ自身の胸も抉れるように穴が空き、バチバチと白い光が上がっている。

複眼を明滅させながらよろめきつつも立ち上がったガッツを見て、飄々と立った男……結城は意外そうに口を開いた。

「頑丈だな……ライダーマンマシンMk-IIの爆発を受けても分解されないとは。少々驚いた」

「貴様は……!」

押し殺した声を発して顔を上げたガッツが息を呑む。

「ライダーマン……?」

思わず呟いた彼に、『ライダーマン』と呼ばれた結城は返した。

「それは過去の名だ。今の俺は修羅……俺は、世界を救う鬼となっている!」

叫んで、彼は両手を勢い良く振った。

「ツイン! チェンジアーム!」

その左腕が白く光り、一瞬後、巨大な鉤爪のついた機械の腕に変質する。

右腕は爪が異様に長く伸びた、やはり機械じかけの、猛禽類のような形に変形した。

「チェーンアーム!」

結城が叫んで、左腕の鉤爪を勢い良くガッツに向けて振る。

鉤爪の部分が火を吹き、弧を描いて射出された。

腕の部分にチェーンが仕込んであり、鋼鉄のそれが怪しく光る。

鎖は勢いよく伸びると、一瞬でガッツの頭部にグルグルと巻き付いた。

「デストラクションアーム! 起動ォ!」

右手がガパァ、と開き、手の平の部分が真っ白に発光を始める。

自動でチェーンが巻き取られ、ガッツの巨体が簡単に引きずられて結城のところまでスライドした。

「何だ……この力は……!」

もがくガッツに、結城は発光している右腕を振り下ろした。

ガッツがとっさに鎧の腕でそれを受ける。

次の瞬間、右腕に掴まれた鎧が、ドパァン!と音を立てて黒い砂になり、空中に飛び散った。

「何……!」

「破壊させてもらう! オーバーテクノロジー!」

結城がそう叫んで、右手をガッツの頭部に再度振り下ろそうとする。

「電ンンンン! パンチィ!」

そこで城の声が響き、白く明滅する拳が、結城の頭部に向けて繰り出された。

結城はしかし、それをいち早く察すると、ガッツから飛び退って体を離した。

そして柔術の構えをとりざまに、城の腕を横に流す。

「くっ……」

歯を噛んだ結城の、電パンチがかすったスーツが真っ黒に焦げている。

城は結城に構わず、ガッツの腕を掴むと肩に担ぎ上げ、飛び退って彼から距離をとった。

「何をするんだ、丈二さん! それに、その腕は……!」

声を上げた城を面白くなさそうに一瞥し、結城は両腕を振った。

白い光が拡散して腕に集まり、元の銀色の手を構成する。

「俺の名前は結城正儀(ゆうきまさき)……お前たちが『ライダーマン』と呼ぶ、結城丈二(ゆうきじょうじ)の息子だ!」

「何だって……?」

愕然として口をつぐんだ城に対し、結城は嘲るように言った。

「さすがにストロンガーを真正面から相手にして勝てるとは思わないからな。今回はこれを手に入れただけで良しとする」

ポン、と空中に放り投げたキューブ状の物体を掴み、結城は笑った。

「それは……アームドバイクのコア! いつの間に抜き取りやがった!」

ガッツが怒鳴るも、核を取られた鎧は、ただの鉄の塊として、逆に彼の体を押さえつけ、拘束していた。

動くことができないガッツを鼻で笑い、結城は続けた。

「仮面ライダーナンバーゼロ。お前はいずれ破壊する。それと……」

結城は呆然としてこちらを見つめている城に言った。

「この世界はデルザー達『改造人間』により、じきユートピア(楽園)に変わる。その新時代に、お前たち仮面ライダーは不要だ」

首を掻っ切る仕草をして、ライダーマン、結城正儀は笑った。

「いずれ消えてもらう。じゃあな!」

結城はそう叫ぶと、手にしていたリモコンを操作した。

爆発したバイク、ライダーマンマシンの残骸が、独りでに寄り集まり、数秒も経たずに元の黒い大型バイクを形成する。

それに乗り込み、猛スピードで彼はシティと反対方向に走り去った。

「くそっ……逃げられる! 司令!」

ガッツに怒鳴られ、城がハッとして彼を見る。

「チッ……今からカブトローを出しても追いつけねぇ。してやられたな……」

押し殺した声で城が呟く。

ガッツは体を押さえつけている鉄の塊を振り払って、立ち上がった。

その胸に空いた大穴から、バチバチと放電が走っている。

彼は、恐る恐ると言った具合でこちらに近づいてくる正彦を見て、発しかけていた言葉を飲み込んだ。

「よう、やっと来たか。ジャリ」

城がそう言ってその場にあぐらをかく。

正彦は両拳を握りしめ、ガッツを睨みつけた。

そして何度か言葉を発しようとして失敗し、やがてかすれた声で言った。

「ゆ、許さないからな……」

「…………」

傷だらけの姿で、ガッツが黙ってそれを聞く。

「次負けたら……絶対に、絶対に許さないからな!」

そう言い捨てて、正彦は二人に背を向けて、基地の方に走り去った。

彼の姿が消えてから、城は喉を鳴らして笑った。

「ハハッ、面白ェ奴」

「でしょう? 筋がいい」

ガッツが頷いて笑い返す。

しかし彼らはすぐに笑みを止めると、結城が走り去った方向を見た。

「結城正儀……ライダーマンに子供がいたのですか? そして敵に協力している。どういうことだ……」

ガッツが呟く。

城はしばらく沈黙していたが、やがて体の埃を払って立ち上がった。

「難しいことは後だ。やることは山ほど残ってるからな。ガッツ、お前は壊したアームドバイクの始末書だ」

「うへぇ。相変わらず人使いが荒い」

「新品をそこまで初戦でブッ壊せる奴はそうそういねぇからな。だが、気になるな……」

息をついて、城は呟いた。

「……アームドバイクのコアなんて手に入れて、何をするつもりだ……?」



「結城正儀! 何故ストロンガーもナンバーゼロも破壊せずに、おめおめと逃げ帰ってきた!」

黒い三角形のマスクをつけた男……ジェネラルシャドウに怒鳴られ、結城は薄暗い地下室の中、椅子に座って何かをいじりながら、そちらを一瞥もせずに答えた。

「おいおい……無理を言いなさんな。戦いには勝機ってもんがある。元はといえばおタクらのバカ三人組が先走って俺を置いていったのが悪いんだぜ?」

「クッ……」

「さすがに真正面から、手駒もなしで仮面ライダー二体を相手にできるとは思わねえ」

「貴様……我らのことを手駒とぬかしたかな……」

押し殺した声を発したジェネラルシャドウに、結城は肩をすくめて言った。

「どうかな? おタクらが俺に対して同じようなことを影で言ってるのは聞くが」

「言わせておけば……!」

「おっと」

トランプカードを指で摘んで振りかぶったジェネラルシャドウに向き直り、結城は言った。

「俺に手出しをしてはならないと、悪魔元帥から言われてるんじゃないのか? 仲良く行こうぜ、化け物さんよ」

「…………」

しばらく二人は睨み合っていたが、やがてシェネラルシャドウは腕を収めて、彼に背を向けた。

「……一つだけ覚えておくがいい」

「…………」

「私は、貴様が『アレ』を開発し、そして運用できる力を持っているということがあるから、その首を繋げてやっている。『アレ』が完成すれば……分かるな?」

「さぁ……?」

馬鹿にしたように笑い、結城は答えた。

「知らんな」



ここはどこだ?

俺は何で。

どうしてここにいる?

アルは、どこだ。

紗代子は。

おやっさんは……。

風見さん……。

薄れ行く意識の中で、龍一は思った。

――俺は、一体何なんだ。

――何故、俺は……。

――死なない……。

記憶の片隅で、何かが笑っている。

それは嘲るような笑いではなく。

どこか悲しげな、絶望を含んだ笑いだった。

俺は仮面ライダー。

十一号だ。

だが、本当に俺は「その仮面ライダー」なのだろうか。

ふと、そう思った龍一は目を見開いた。

違う……。

俺は……。

恐ろしい事実に気が付き、彼は両手で頭を抱え、絶叫した。

俺は。

違う。

相葉……。

『圭介』

違う、俺は……。

『相葉圭介』ではない。

その疑いようもない事実に気がついてしまい、恐怖に心が支配される。

なら俺は……。

一体、何だ?

風見さん……俺をどうか。

助けてください……。

その呟きは、暗闇に紛れてしまい。

そして、消えた。



第6話に続く!!!

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仮面ライダーアルズの感想

ようやくまとまつた時間が出来て、仮面ライダーアルズを読むことが出来ました。
記憶を失った悲しき改造人間、龍二と彼が変身する仮面ライダーアルズの活躍に期待です。
アルズシステムちゃんはきっとこの先最萌キャラになる(根拠の無い自信)
結城正儀の存在も気にせずには居られない。彼の言う楽園とは?
しっかし病院にハッキングをかけそうな名前だなぁ

そういえば、当ブログではマインドスイーパーやクラルスは連載しないのでしょうか?

アルズシステムはこの先デレてくれるのでしょうか……!?
結城正儀が意外にも大人気でびっくりしてます。
みんなライダーマンが好きなんですねえ。

個人的にはガッツとストロンガーの描写に力を入れているのですが、そちらもいかがでしょうか?
正彦の今後にも乞うご期待です!!

今は龍一は変身出来る環境にいませんが、ガッツと並ぶときがくるのでしょうか?
お楽しみにです!

マインドスイーパーに関しましては、ストックがまだありますので近いうちに載せられればと思います。
クラルスは残念ながら書けていないので、もう少しお待ちください><

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第1話 劣等感の階段 前編後編
第2話 血の雨の降る景色 前編後編
第3話 蜘蛛の城 前編後編
第4話 蝶々の鳴く丘で 前編後編
第5話 シロイセカイ 前編後編
第6話 奴隷マーケット 前編後編
第7話 ジグザグパズル 前編後編
第8話 あの時計塔を探せ 前編後編
第9話 name 前編後編
第10話 風の先に見えた 前編後編
第11話 晴れた空に浮かぶ 前編後編
第12話 スカイフィッシュ 前編後編
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