2017-10

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仮面ライダーアルズ 第3話 力と技の風車が回る

注:この小説は創作小説です。現存する団体とは一切関係がありません。

バックナンバーは「こちら」から! もしくは、サイドバーのリンクからどうぞ!



仮面ライダーアルズ
……Masked Rider Al-z

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第3話 「力と技の風車が回る」

仮面ライダーV3、風見志郎は改造人間である。
謎の秘密結社デストロンによって重症を負わされたが……。
仮面ライダー1号、2号によって改造手術を受け、仮面ライダーV3として蘇った!

――「仮面ライダーV3」より




薄暗い、廃墟のような空間だった。

どこかの格納庫のような広さのそこに次々と強力なライトがともり、明かりがついていく。

規則正しく軍隊のように並ぶ、生気を感じさせない瞳をした戦闘員達。

少し離れた所に、何百人もいるその戦闘員たちを一望できる壇が設置されていた。

そこに、四人の男達が立っていた。

一人が手を上げ

「デェーストロン!」

と叫ぶ。

それに呼応して、数百人の戦闘員達が一斉に右手を振り上げ

「キィィ!」

と甲高い声で応えた。

「今こそ、我らが新生デェーストロンの再興の時! 貴様らには存分に働いてもらうことになる! 心してその身を我らに捧げよ!」

「キィィ! キィィ!」

戦闘員達が猿のような奇声を上げる。

その男……ヨロイ元帥の後ろに立っていた、長い白髪をたなびかせた老人が口を開いた。

「しかしヨロイ元帥よ……お前ほどの男が仮面ライダーを取り逃すとはな……」

彼……ツバサ大僧正が苦そうに言うと、振り向かずにヨロイ元帥は、ニィ……と裂けそうな程口を開いて笑った。

しかし、重苦しい声でツバサ大僧正に返す。

「いや、何……やはり腐っても『仮面ライダー』……侮れん」

「本当に11号と名乗ったのか? どの組織が作り出したのだ?」

ツバサ大僧正の隣に立っていた、動物の頭骨のようなものを被った無骨な男が口を開く。

ヨロイ元帥はその男……キバ男爵を見て、彼らに向き直ってから静かに言った。

「私の言葉に偽りがあるとでも?」

「昔から戦闘狂のお前は信用できん。俺は、自分の目で見たものにしか確証を持たん主義でな」

「何だと……?」

真正面から侮辱を受けたヨロイ元帥が、目つきを鋭くしてキバ男爵を睨む。

「新しいタイプの仮面ラァーイダか……」

もう一人の壮年男性……ドクトルG(ゲー)が重苦しく口を挟んだ。

「仮面ラァーイダV3は死んだ。我らはそれを確認して、この地に再生を誓ったのだ。そこで新しい脅威とは、なかなか興味深い……我らが見た仮面ラァーイダV3は本物だったのかと、疑問に思うところも出てくるわ……」

「…………」

ヨロイ元帥が口をつぐんで、三人の鋭い視線に背中を向ける。

「くくっ……」

喉を鳴らして笑い、彼は続けた。

「直に分かる……」



暗い海の底に、沈んでいくような感覚だった。

体中の感覚が、冷えた水に奪われ、段々となくなっていく。

お母さん!

大声を上げて母の名を呼ぶ。

お父さん……!

その声には誰も答えない。

いや、そもそも声が出ているのか。

それ以前に。

僕は今どこにいるのか。

正彦はその事実に気が付き、身震いをした。

僕は……。

僕は、これから何を。

何をされるんだ。

手術台のような所に寝かされ、マスクをつけた男たちに覗きこまれている光景が、頭にフラッシュバックする。

恐怖。

狂気。

叫ぼうとしても体が動かない。

お母さん。

お父さん。

僕は……。



目を開ける。

曇った視界に、暗い電球に照らされた淀んだ空気が飛び込んできた。

手を伸ばして、手の平を顔の前に持ってくる。

何度か握って開いてを繰り返して、目の焦点を手に合わせる。

『リューイチ、目が覚めましたか』

安心したように枕元のアルズ端末から声がした。

「ここは……」

『ジャパンシティの地下シェルターの中です。あなたは十五時間ほど眠っていました』

「十五時間……」

繰り返すように呟き、龍一は体を起こした。

何だかものすごい、疲労のようなものが芯に溜まっている。

しかしそこで、龍一は自分の胸に何気なく手をやり、傷がどこにもないことに気が付き、慌てて着ていたシャツをまくりあげた。

きれいな肌が目についた。

おかしい。

確か、胸に……。

「俺……」

龍一はかすれた声を発した。

その言葉を発する前、「事実」に気づいてしまい、背筋に悪寒が走ったからだった。

「確か……ヨロイ元帥の攻撃を受けて、死にかけたよな……」

胸を手の平で叩く。

「何で……? 何で平気なんだ?」

『…………』

「どこも痛くないぞ……骨だって、折れてない。俺、何かされたのか?」

狼狽する龍一に、しばらく沈黙してからアルズは言った。

『リューイチ、落ち着いて聞いてください』

「…………?」

『あなたは、何かをされたのではありません。既に、何かをされている側の人間です』

「え……?」

『もう一度言いましょう。あなたは「改造人間」です』

「何だって?」

思わず聞き返して、龍一はアルズ端末を手に取り、大声を上げた。

「俺が? 俺が改造人間? だって、俺見た目も何もかも……人間じゃ……」

『骨折十五ヶ所。内臓破裂三箇所。外傷多数。あなたの十五時間前の損傷です』

「…………」

呆然とした龍一に、アルズは淡々と続けた。

『死んでいてもおかしくはない怪我が、一時間ほどでほぼ完全に治癒しました。強力な再生力が、あなたの体を自己修復したと思われます』

「再生力……? 何だ、それ……」

『生体機械の作用による自己治癒効果だと思われます。寝ている間にスキャンさせてもらいました。リューイチの体には、生体機械が八十五%組み込まれています』

その絶望的な事実を聞き、龍一は言葉を失った。

つまり。

つまり自分は……。

「俺……」

『…………』

「人間じゃ……ない?」

『厳密に言うと、改造人間に分類されます。国際規定規約で、人体の六十五%以上に改造が施された場合、「人間」とは認められなくなります。その意味ではあなたは、すでに人間ではないと言えます』

軽く乾いた笑いを発して、龍一は言った。

「はは……何言ってんだよ」

『…………』

「俺が改造人間……? 八十五%が機械? おい、悪い冗談だぜ……笑えねえ」

『冗談ではありません。私は、至って真面目に話をしています』

「何言ってんだよ!」

大声を上げて、龍一はアルズ端末に向けて叫んだ。

「冗談だって言えよ! お前、自分が何言ってるのかわかってるのか!」

『…………』

「俺は人間だ……人間なんだ……」

沈黙したアルズに、龍一は絞りだすように言った。

「だって、俺……普通にこうして、生きてるじゃないか……」

『人間かそうでないかの区別は、非常に曖昧なものです。その点では私は、リューイチが人間であるという事実を否定はしません。しかし、あなたの体に生体機械が組み込まれていること、これは事実です。それに、あなたはサイキック能力を使うことが出来ます。先日、石を投げたことを覚えていますか?』

「あ……ああ。蛾人間にか……」

『この世界はコリオリ力の変動により、物体は射出されても標的にほぼ当たりません。しかしあなたの放った石は、標的に直進したばかりか、ものすごい勢いで改造人間を貫きました。サイキック能力の補正を受けていたと考えるしかありません』

「…………」

『ですからリューイチ、あなたは……』

「そうだ。龍一、お前は『改造人間』だ」

そこで扉が開き、藤兵衛と壮年の男性が中に入ってきた。

「おやっさん……」

「思いだしたんじゃなかったのか? お前は正義のライダー。仮面ライダーだと」

言われ、龍一は言葉に詰まった。

まだ、頭のどこかにモヤのようなものがかかったままだったからだ。

「完全に思い出したわけじゃないんだ。ただ、俺は風見さん……V3と行動を共にしたことがある。その時に風見さんが俺に言っていたのは……」

「…………」

「お前は、仮面ライダーを名乗れって。そう言っていたことだけだ……」

「風見志郎……『仮面ライダーV3』か……」

藤兵衛はそう言うと、ベッド脇の椅子に腰を下ろした。

「このジャパンシティを占拠している、秘密結社『デストロン』は、風見……V3が戦っていた相手だ」

「何だって……?」

龍一はそう言って身を乗り出した。

「仮面ライダーは、秘密結社を根絶させたんじゃないのか?」

「そのはずだった。ヨロイ元帥も、既に死んでいる改造人間の一人だ。今回の件は裏がある。それも、俺達の思いもつかないような裏がな……」

そう言った藤兵衛の後ろから、壮年の白衣を着た男性が近づいてきた。

「君の体を調べさせてもらった」

「…………」

「私の名前は坂城健次郎。ここで医者をやっている。藤兵衛の友人だ」

「坂城達、生き残ったシティの上層住民は、デストロンから逃れて外に出る手段を講じているんだ」

「最も、それは今や絶望的だが……」

坂城はそう言ってから、パサリと龍一の前にレントゲン写真を放った。

「君の体だ。見たまえ」

促されて写真を手に取る。

そこには、人間の骨格とは思えないほど、微細に張り巡らされた白い筋が映っていた。

「何だ……これ……」

「生体機械、細胞レベルで人体と同じ機能を形作る、いわゆる『ナノマシン』というものだ」

「…………」

「ナノマシンは、形状記憶の特性も持っている。形作ったものを、自己修復するんだ。君の体は瀕死の重傷から、十時間程度で通常の状態に『修復』された。それはナノマシンの作用だ」
「これ……これって、まるで……」

――人間じゃ、ないみたいだ。

その一言を言えずに、乾いた喉に唾を飲み込む。

「龍一」

そこで藤兵衛が口を開いた。

「お前の気持ちはわかる。改造された人間は、ごまんと見てきたからな。ただ、これだけは言える。お前は……いや、お前たちはまだ人間だ。人の形をしている限り、人の心を忘れない限り、それはまだ人間なんだ」

「……そうだ。俺、ヨロイ元帥から……」

「…………」

「上層の市民は、既に三分の一は戦闘員に改造されてるって、聞いた……」

青くなり、龍一は藤兵衛の肩を両手で掴んだ。

「おやっさん! デストロンは俺みたいに……上層の市民を改造したのか!」

「ああ……そうだ。おそらく脳改造も施されているだろう。自我もなくなり、ただ戦闘するだけのマシーンに改造された人が大半だ。そうなればもう救う手立てはない」

坂城が歯を噛んで目をそらす。

藤兵衛はまっすぐ龍一を見て続けた。

「お前はまだ脳改造をされていない。つまり、正義の自我がある。戦え。お前は仮面ライダーとして、正義を執行するんだ」

「正義……」

「聞いてくれ龍一。この上層に生き残っている人を外に誘導する。それにはお前の力が不可欠だ。協力してくれ」

「外に……? でも、外に出たって、デストロンの攻撃は……」

言いよどんだ龍一に、藤兵衛は頷いて続けた。

「ああ。だが、国連軍がもう少しでここに到着する。そいつらに市民は保護してもらう。俺が連絡した」

「国連……おやっさん、あんた一体……」

「時間がない。説明を始めるぞ」

坂城がそこで割って入った。

そしてベッド脇のテーブルに地図を広げる。

上層の詳しい地図だった。

「私達が隠れているシェルターはここ。そして……」

ペンで地図をなぞり、彼は続けた。

「デストロンの秘密結社は、上層の国会議事堂を占拠している。確認されているだけで、デストロンには『幹部』と呼ばれる強力な改造人間が、四体いる。君が戦ったヨロイ元帥もその一人だ」

坂城はそう言って、手に持っていた小型の携帯端末のスイッチを入れた。

薄暗い壁に、端末から光が伸び、映画のように監視カメラの映像が映し出される。

「これがヨロイ元帥。上層の警備隊は、こいつ一人に壊滅させられた。三十分もかからなかったよ……」

映像に映しだされたヨロイ元帥を見て、龍一の背筋に悪寒が走った。

完膚なきまでの完敗。

その勝利者を見て、恐怖が胸の奥に広がっていく。

「これはキバ男爵。その隣にいるのがツバサ大僧正。そしてこの男が、ドクトルG(ゲー)だ。全員、ヨロイ元帥と同等の力を持っている」

「そしてこいつらも、改造人間だ。龍一、お前のように『変身』をする」

藤兵衛が言葉を引き継ぐ。

それを聞いて、龍一は青くなった。

「え……ヨロイ元帥は、あれが本当の姿じゃないのか……?」

「ああ。こいつらが、かつてV3が倒したデストロンの幹部だとすれば、更に強力な姿に変わる可能性が高い。お前を倒したのは、仮の姿での話だ」

「あんなのが……更に三体……そして本当の力じゃない……?」

龍一は引きつった笑いを発した。

「はは……冗談じゃねーぞ……」

「確かに、四対一じゃ今のお前に勝ち目はない。それに戦闘員も多数いるしな。正面突破しようとしたら、なぶり殺しにあうのがオチだ」

残酷な死刑判決を、あっさりと藤兵衛は言い放った。

「だが、こいつらを分散させる方法はある。風見から教わらなかったか? 多数の強力な敵と喧嘩する時は、まず戦力を分散させろ……とな」

「分散……理屈ではそうだけど、どうやって?」

「国会議事堂を、上層の一区画ごと爆破する」

藤兵衛はこともなげに言い放つと、地図の何箇所かをペンで指した。

「ここと……ここと、ここ。この三点が上層の支柱になっている。坂城達は、そこに大量の爆薬を仕掛けているんだ。一斉に爆破させれば、国会議事堂があるフロアが完全に崩れて埋没する」

『……確かに、構造上その箇所を爆破させれば、フロアが崩れ落ちますね』

今まで黙っていたアルズが口を挟んだ。

『その作戦で、戦闘員の大多数は無力化できるかもしれません』

「待てよ、おやっさん」

龍一がそこで口を開く。

「戦闘員だって、元は上層の市民なんだろ? 何とかして助けなくていいのか……?」

すがるような疑問だった。

龍一自身も、既に何人か「殺して」いるのだから。

しかし藤兵衛は、龍一を横目で一瞥してから、地図に視線を戻し、淡々と言った。

「脳改造が施され、完全な改造人間になってしまったら、もう元には戻れない」

「そんな……!」

「意思も自我も、何もかもがなくなるんだ。人間ではなくなる。分かるか? それはもう、人間の形をしたロボットなんだよ」

「でも……でも! 元は人間だ!」

龍一は大声を上げて、シーツを握りしめた。

「人間だったんだろ……!」

俯いて声を絞り出した龍一に、坂城が静かに言った。

「引導を渡してやってくれないか」

「…………」

「自分の意志とは関係なく、『同じ人間』を襲う魂の苦しみは、筆舌に尽くしがたい。君には、その呪縛から彼らを解き放ってやれる力がある」

「物は言いようだぜ、おっさん。俺に人殺しをしろってのか! 自分にその力がないから!」

「ああそうだ……! 私にはその力がない!」

ドン、と壁を叩いて坂城は龍一に怒鳴り返した。

「君は正義の仮面ライダーではなかったのか? ここに生き残っている、無改造の人間達を、『したくない』という理由だけで、既に改造された人間を倒せずに、見捨ててもいいとでも言うのか!」

「俺はそんなことは言ってない!」

「熱くなるな、二人とも」

藤兵衛がゆっくりと口を開く。

「龍一、お前の言いたいことも、その気持もよく分かる。だが、脳改造をされたらもうそれは人間ではない。事実であり、真実なんだよ。倒すしかない」

「…………」

言葉を失った彼の頭をワシワシと撫でて、藤兵衛は続けた。

「つらいだろう。苦しく、訳がわからないだろう。だが理解しろ。お前がそれでも見捨てられないって言うなら、行動で示せばいい。それがお前の『正義』なら、それに準じればいい。俺はとめないよ」

「おやっさん……」

「……時間がない、藤兵衛。デストロンがいつ仕掛けた爆弾に気づくか分からない。早く計画を実行に移したい」

坂城が息を吐いて言葉を挟む。

「分かった。龍一、とにかくここから、生き残った人を脱出させる。その作戦を伝える。協力してくれるな?」

龍一は歯を噛んで、拳を握りしめた。

そしてそれを振り上げ……。

ドンッ、と壁に叩き付けた。

合金のシェルター壁が放射状にクレーターを開き、ベッコリと歪む。

ウワンウワンと重低音が部屋の中に響いた。

「……当然だ!」

壁に映し出されたヨロイ元帥を睨みつけながら、彼は言葉を絞り出した。



藤兵衛と坂城が発案した、デストロン幹部分断作戦、名づけて「国会議事堂爆破作戦」は、極めてこちらに不利な条件だった。

期待できる戦力は、シェルターに保管されていた爆薬と刃物類、そして「龍一」のみ。

百人以上の生き残りを、国会議事堂を爆破して、注意をそちらに引き寄せ、地下道を通ってスラム街に誘導。

国連軍が到着するまで、スラム街で耐えるという内容だった。

国会議事堂そのものを爆破するので、中にいるはずの四大幹部の連携を断ち、うまくいけば分断、各個撃破できるかもしれない。

しかしそれはあくまで希望的観測だ。

龍一自身もその爆発で、状況認識ができなくなるのが最大の問題だった。

爆発などものともせずに、幹部が突入先で固まっていたら。

アウトだ。

賭けとしては分が悪すぎる博打だった。

そもそも、爆弾が正常に作動するかどうかも分からないのだ。



『リューイチ、勝率が極めて低い作戦です。離脱をすすめます』

上層の排気口を匍匐前進で進んでいた龍一に、アルズが静かに言った。

「離脱? 逃げろってことか?」

『はい。あなたは、このままではデストロンに殺されます』

断言してから、アルズは続けた。

『タチバナトウベエも、サカシロケンジロウも、あなたの力を利用しようとしています。しかしながら、あなた一人だけなら、この上層を脱出可能です。百人以上の市民を連れての脱出、幹部の撃破は極めて難しいと思われます』

「見捨てて、逃げろってことだよな……」

『はい』

繰り返した龍一に、端的にアルズが答える。

龍一は乾いた声で笑い、小さく呟くように返した。

「はは……俺だって逃げたいさ……」

『…………』

「でもな。今ここで逃げたら……俺、何も分からないままだ。何もできないままだ。負け犬で、臆病で、卑屈な『人間』のまま終わっちまう……いや、人間以下で終わっちまうんだ。そんなのは嫌だ。俺は全部知りたい。心に決着をつけたい。だから……」

『正義……ですか』

アルズがそれに返す。

『あなたの正義とは、その独善的思考のことなのですか?』

「独善的……?」

『一方的に振りかざす正義は、その力が強大になればなるほど凶器となります。それを……』

「アル、悪い。時間だ」

アルズの声を打ち消し、龍一は目の前の排気口を外し、端末の明かりをたよりに、排気ダクトの中に降りた。

「ここは国会議事堂の真上のフロアのはずだな?」

『……はい。階下にエゾルデ反応多数。改造人間です』

「変身はできるか?」

『一回の着装時間は、長くておよそ三十分程度です。サイキックエナジーを使うほど、時間は短くなります。一回変身後は、最短でも十五分は再着装不可能です。よく考えて変身してください』

「分かった」

短く受け答え、龍一は端末を手に持って、、眼下の空間……国会議事堂の中を見下ろした。

「いた……」

四人の男たちが、離れた壇上にいた。

「ヨロイ元帥……!」

歯を噛む。

鉄球と蟹のような兜を被ったヨロイ元帥が、キバ男爵と思われる男と何かを話している。

「何やってんだあいつら……?」

率直な疑問を口に出すと、アルズは短く答えた。

『通信しているようです』

「通信? 誰とだ……」

『傍受も出来ますが、チューニングに時間がかかります。爆発まで、残り二十秒。衝撃に備えてください』

「爆発の瞬間変身する。その後は、各個撃破だ!」

『……了解。残り十秒。九、八、七……』

「頼むぜおやっさん……」

爆弾は遠隔で藤兵衛が爆破することになっている。

そして、アルズがゼロ、と言った瞬間。

豪炎と爆音、轟音、そして周囲全体を揺るがす爆炎が、四方八方から吹き上がった。

「うお……!」

思わずよろめいて、押し殺した声を発する。

「爆薬の量が多すぎだろ……!」

『このフロアが下に崩落します。変身を』

「分かった!」

グラグラと揺れ、階下に落ち始めたフロア。

まるでだるま落としのように、国会議事堂フロアが崩れて、タワーが崩落を始める。

龍一はその中で端末を掲げて叫んだ。

「変身!」

白い光が彼の体を包み、一瞬後、白黒のボディスーツと、昆虫の頭部のような姿になって、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した国会議事堂に飛び降りる。

瓦礫が次から次へと雨のように降り注いでいた。

戦闘員達がそれに押しつぶされ、断末魔の叫び声を、至るところで上げている。

「くそ……!」

それを横目で見ながら、龍一は燃え盛る炎の奥の奥に立っている、ヨロイ元帥をまっすぐ睨みつけた。

ヨロイ元帥は百メートル以上離れている場所で、龍一の姿を見とめると、ニヤァ……と口が裂けそうな程開いて笑った。

一瞬後、彼の姿は崩落したタワーに潰されるように消えた。

龍一はそこで、タワーが崩壊を続ける中、襲いかかってきた戦闘員の攻撃を、振り返ることもなく跳んで避けた。

バク転の要領で地面を転がりながら、彼は逃げようともせずに自分を取り囲む戦闘員達に向けて怒鳴った。

「やめろ! 俺はあんた達を助けに来たんだ!」

瓦礫が頭上に迫る。

龍一はそれを間一髪で避けると、吹き荒れる炎の中、特殊警棒を振り下ろした戦闘員の胸に蹴りを入れた。

まるで発泡スチロールのように戦闘員が吹き飛び、壁にブチ当たって動かなくなる。

「くそっ……戦うしかないのか……!」

『龍一、微弱な生体反応です』

「何だって?」

アルズがそこで口を挟んだ。

『人間の反応があります。距離五十。動いていません』

「どうしてこんなところに!」

飛びかかってきた戦闘員の顔面に拳を叩き込む。

手加減はしていたのだが、顔骨が砕け、首の骨が折れ曲がる感触がした。

「畜生! 加減がきかねえ!」

『強力なエゾルデ反応が近づいています。エマージェンシーコールレッド。ヨロイ元帥と同等の生体パルスです!』

「その生体反応はどこだ!」

『右に三十度曲がってください』

アルズの指示通りに行くと、瓦礫に足を挟まれた小さな影……子供だと思われる戦闘員の姿があった。

「戦闘員……」

『そこから発せられています』

「まさか……改造されきってないのか! この子は!」

しゃがんでその戦闘員のマスクを剥ぎ取る。

そこには、機械が首の下まで埋め込まれた少年の顔があった。

彼は小さく呻くと、か細く目を開けた。

そして龍一の顔を見て悲鳴を上げる。

「待て! 俺は味方だ。今助けてやる!」

「お母さん! 嫌だ! まだ死にたくない!」

『エゾルデ反応来ます。迎撃してください』

アルズの声と間髪を置かずに、反射的に身を屈めた龍一の頭上を、かまいたちのような風が通り過ぎた。

周囲に突風が巻き起こり、たまらず龍一は吹き飛ばされ、重力に反して、凄まじい勢いで、崩落しかけている天井に突き刺さった。

「があ!」

舌を噛んだ。

血の味が口の中に広がる。

『損傷は軽微です。避けてください!』

「言われなくてもな!」

アルズに怒鳴り返し、龍一は天井を蹴って、自分に向けて放たれたかまいたちのような空気の渦を避けた。

天井がすさまじい勢いで炸裂し、先ほどの少年にバラバラと瓦礫が降り注ぐ。

龍一はとっさに少年の上に覆いかぶさるようにして彼を守った。

「ひ……」

「俺は……味方だ……」

瓦礫に押しつぶされそうになりながら、龍一は言った。

そしてそれを跳ね除け、少し離れたところに立っていた、動物の頭骨のようなものを被った男に向き直る。

「仮面ライダー11号……アルズか」

男……キバ男爵はそう言って、くっくと喉を鳴らして笑った。

「失敗作を庇って傷を受けるようではな。まだまだ甘さがあると見える」

「貴様らァ……」

龍一は歯を噛んで、キバ男爵に対して拳闘のポーズをとった。

「ほう……赤心少林拳か。その構え、データ上でしか見たことはなかったが」

「俺のこの拳闘を知っているのか!」

「くくく……学ばない奴め。元帥も言ってはいなかったか?」

ドン、と手にしていた杖を地面に叩きつけ、キバ男爵は、崩落が収まり、燃え盛るフロアの中叫んだ。

「それを死に往くお前に教える筋合いはないと!」

「……おのれデストロン!」

少年を庇うように立ち、龍一は怒鳴った。

「許さん!」

崩落が収まったことにより、生き残った戦闘員達が続々と周りに集まっていた。

早くこのキバ男爵を仕留めなければ、龍一自身の身も危ない。

「ドーブー!」

キバ男爵が甲高い声を上げ、両手を天に伸ばす。

その背中が、まるで昆虫の脱皮のようにバリリと割れた。

そして人間の体の中から、蛾人間や虎人間の時のように、異形の体が姿を現した。

象……いや。

マンモス。

鼻の長い獣の顔。

右手は人間の腕。

左腕はマンモスの足。

「フシュゥゥ……」

息を吐き、キバ男爵は喉を鳴らした。

「血が足りぬ……」

「変身……くそ!」

できれば変身をする前に仕留めたかったのが本音だった。

しかし、過ぎたことを言っても仕方がない。

無理矢理に思考を戦いに切り替える。

キバ男爵は鼻を振ると、近くにいた戦闘員に蛇のように巻きつけ、鼻先をその腹に突き刺した。

戦闘員が悶え苦しみ、その体が水分を失ったように細く、小さくなっていく。

ミイラのようになったそれを脇に放ると、彼は足を踏み出した。

ズシン、という重低音がして、周囲に地震のような揺れが広がる。

「お前ら……手出しをするなよ。これは私と11号の戦いだ……」

周囲の戦闘員にそう言うと、キバ男爵は構えを解かない龍一に対して、振り上げたマンモスの腕を打ち下ろした。

『サイキックフィールド全開! 避けてください!』

アルズの切迫した声が龍一の耳を打つ。

しかし龍一は避けなかった。

背後に少年の姿を見て、歯を噛んで息を整える。

そして衝撃波をまとって豪速で振り下ろされたマンモス腕に対し、手の平で一抱えのボールを包み込むような動きをする。

受け止めるのではなく、受け流す。

するっ、とマンモスの腕が龍一の体の脇を通過した。

龍一はその隙を逃さず、ぐるりとその場を反転すると、固めた拳を振り上げ、全身の体重を込めてキバ男爵の頭を殴りつけた。

『サイキックナックルを使用します』

青白い光が拳から走り、キバ男爵の頭に吸い込まれる。

しかし、相手は倒れなかった。

よろめいて数歩下がっただけで、首の骨をゴキゴキと鳴らして息をつく。

「電パンチは私には効かんぞ……対策をさせてもらったからな」

「何ィ……?」

「サイキックフィールドを張れるのが自分だけだと思ったか? 私のフィールドで、サイキックエネルギーを分散させ、衝撃とともに散らしている。お前の技は効かん」

「…………」

「しかし、赤心少林拳の『梅花』の型までもを使うとは、少々驚いた。それに敬意を評し、一瞬で終わらせてくれるわ!」

「く……!」

歯噛みする暇もなく、キバ男爵は口を開き、赤い霧を噴き出し始めた。

『強力な溶解酸の霧です! 近づいてはいけません!』

霧に触れた龍一のスーツの手の部分が、ジュゥッ、と音を立てて煙を上げる。

「どうする! この霧を梅花で受け流して見せろ!」

杖を手に持ち、彼はそれを振った。

竜巻が巻き起こった。

それは赤い霧を吸い込み、赤い竜巻となり龍一に襲いかかった。

背後の少年を横目で見て、龍一はそれを庇って身を屈めた。

「くそ……!」

竜巻が龍一を飲み込んだ、かのように見えた。

次の瞬間だった。

崩落した天井から、一人の男が降ってきた。

「変ッ身ン!」

彼は空中で両手を振り上げると、それを回して、反対側に勢い良く振った。

「ブイスリィァ!」

空気をつんざく声が辺りに響き渡った。

「トゥア!」

彼は雄叫びを上げると、まさに龍一に突き刺さろうとしていた赤い竜巻に飛び込んだ。

次の瞬間、竜巻が逆回転を始めた。

赤い、霧とは違うクリアな光が竜巻の中心から吹き上がる。

「な、何ィ!」

キバ男爵が悲鳴のような絶叫を上げる。

パアァンッと空気が炸裂した。

霧が吹き飛ばされ、まさに霧散する。

中指と人差し指を立て、右手を立てて左手で肘を触る構えを、男は取った。

「貴様はァ!」

キバ男爵が引きつった声を上げる。

「あ……あんた……あんたは!」

龍一が顔を上げて、大声を出した。

トンボのような頭部。

ボディスーツ。

赤い仮面。

緑の複眼。

そして、白いマフラー。

「そうだ! 俺の名は!」

彼はしっかりとした声で叫んだ。

「仮面ライダー! ブイスリィァ!」

「V3だとォ! 貴様は死んだはずでは……」

明らかに狼狽して、キバ男爵がよろめく。

V3と名乗った男、仮面ライダーは龍一を見て言った。

「いつまでボーッとしている。行くぞ、相葉」

「俺の名前か……?」

「……? お前、記憶が……」

「ちぃ! だがここで遭ったのは好都合! まとめて仮面ライダーを二匹葬ってくれるわ!」

キバ男爵が叫んで、体をのけぞらせる。

「死ねェ!」

彼の牙が二本、まるでミサイルのように切り離され、火花をまき散らしながらV3と龍一に襲いかかった。

龍一は拳闘の構えをとり、突き刺さる直前の牙を手で触り、体を回転させる勢いで受け流した。

V3は自分に突き刺さりかけていた牙を見て

「V3サンダー!」

と叫んだ。

彼の触覚が白く光り、周囲に一瞬、雷のような放電が走る。

仮面ライダー達の目の前と背後で、ミサイル牙が爆発した。

『リューイチ、サイキックスラッシュを使用してください。あなたの打撃が効かないなら、斬撃でトドメを』

「分かった!」

龍一は呼応するように声を上げ、右腕を振り上げた。

「V3! 赤熱ゥ!」

V3は続けて叫び、地面を蹴り、天井を三角飛びの要領で蹴り飛ばして、キバ男爵に向けて一筋の光となった。

「キィィィク!」

V3の右足が真っ赤に発光した。

それがキバ男爵の右半身を吹き飛ばした。

「がああああ!」

着地して床を数十メートルも滑ったV3に続くように、龍一は右腕を大きく天に伸ばし、地面を蹴った。

その右腕が白く光り、手首から鋭い、黒光りする刃が現れて形成される。

「ライダァァ!」

「ひ……」

右半身を失ったキバ男爵が、後退りして悲鳴のような声を上げる。

「キ、キバ一族に……栄光あれぇぇ!」

「スラァァッシュ!」

頭部から一刀両断されたキバ男爵が、バチバチと放電して、一拍後、大爆発を上げた。

『残存サイキックエナジー、五十パーセントを切りました。強力なエゾルデ反応が近づいています』

アルズの冷静な声を聞きながら、龍一はゆっくりと近づいてくるV3を、まっすぐと見た。

「V3……風見さん! 生きてたんですね!」

「馬鹿野郎」

ふっ、と彼……風見志郎は笑った。

そして少年に近づき、彼の足を挟んでいる瓦礫を片手で放り投げる。

「俺は不死身の男、風見志郎だぞ。相葉、外に出るぞ。ここは分が悪い」

「は……はい!」

少年を抱え上げ、風見は襲いかかってきた戦闘員に蹴りを入れ、その勢いで、自分が降ってきた天井の穴に飛び込んだ。

龍一も床を蹴ってそれに続く。



物陰からそれを見ていた人影が、ゆらりと動いた。

彼……ヨロイ元帥は、くすぶっているキバ男爵の残骸に近づくと、その爆発した頭部に手を入れ、中から機械の塊のようなものを取り出した。

少しして、ノイズ音と共にキバ男爵の声がそこから流れ出す。

「……元帥……か……よかった……俺を……『ラボ』に……早く……連れて行け……」

「くくく……ははは!」

面白そうにヨロイ元帥は笑うと、無言でキバ男爵の声がするそれ……「核」を握りつぶし、脇に放り捨てた。

「嫌だね」

彼の楽しそうな声が、空気に紛れて消えた。



「ここで迎撃するぞ、相葉!」

タワーの外の廃墟で、風見は龍一に向けてそう怒鳴った。

そして抱えていた少年を瓦礫の隅に降ろし、怯えている彼の前にしゃがみこみ、言った。

「安心しろ。俺達は、君を助けに来たんだ。一緒にここを抜け出そう」

「デストロンの改造人間じゃないの……?」

少年はそう言って、顔をしかめた。

彼の、潰された右足からバチッと青白い放電が走る。

「くそっ……ムゴい……」

歯噛みした龍一を一瞥してから、風見は少年に向けて頷いた。

「ああ。俺達は『仮面ライダー』……人類の味方だよ。君の名前は?」

「ま……正彦」

「そうか、正彦。ここで静かに隠れているんだ。必ず迎えに……」

「お……お願いがあるんだ!」

少年はそう言って、風見にすがりつくようにしがみついた。

「お母さんとお父さんが、同じように改造されて、あの中にいるんだ!」

「何だって……?」

龍一は呆然として、先ほど抜け出してきたタワーを見た。

「……分かった。俺達に任せてくれ。それより、君はどうして脳改造を免れたんだ?」

「のう……改造?」

正彦はそう呟くと、両肩を抱いて震えだした。

「……よく分からないんだ。ただ、お医者さんみたいな人たちが、僕のことを『失敗作』だって……」

「失敗作だと……!」

龍一は拳を握りしめ、ギリ、と歯を噛んだ。

「デストロンめ……」

「相葉、お前に色々説明してやりたいが、今はその時間はない。キバ男爵はさっき倒したが、幹部クラスが、まだいるはずだ。それに……」

『リューイチ、エゾルデ反応が複数接近しています』

風見は龍一に背を預ける形で構えをとった。

「あのタワーの地下に、改造人間の生産プラントがあった。破壊しないと、強力な改造人間が出現する可能性もある」

「で、でも風見さん。俺達外に出てきちまいましたよ!」

「アホな質問をするな。あんな閉塞的な空間で、大多数を相手に戦う馬鹿がどこにいるんだ。敵を一掃してからラボを破壊する。物事には順序ってもんがあるだろ」

風見はそう言ってから、腰につけた発煙筒のようなものを取り外し、天に向けてボタンを押した。

バシュッ、と音がして、小型の装置が射出される。

それは上空二十メートルほどで静止すると、その場をくるくる回転し始めた。

「あれは……」

「『V3ホッパー』だ。周囲の探知ができる」

そう言ってから、彼は額のランプを点滅させながら続けた。

「幸い今は深夜だ。闇に紛れることができる。戦闘員多数……幹部クラスのエネルギー反応が三つ。他に改造人間は見られないが……何故だ……」

「仮面ラァーイダV3! まさか生きていたとはな!」

『上空を高速で接近するエゾルデ反応あり!』

「上か!」

突然上空から浴びせられた声に、龍一と風見は同時に空を見上げた。

月明かりに照らされ、コウモリのような羽根と頭部をした男と、それに片手で掴まり、ぶら下がっているもう一人の改造人間……まるでカニかサソリのような頭部に、鎧をまとった男がいた。

カニ人間は、上空十数メートルから手を離すと、ズゥン、と重低音を立てて風見の前に着地した。

続いて龍一の前に、コウモリ人間が着地する。

「少々驚かされたが……儂ら幹部の同時攻撃を、今の貴様らにかわすことができるかな……」

気味の悪い笑い方をしながら、コウモリ人間が口を開く。

「ドクトルGに……ツバサ大僧正! いや、カニレーザー、死人コウモリ! 貴様ら悪の化身は、何度蘇っても、この不死身の男! 仮面ライダーV3が倒す!」

風見がドクトルGと呼んだカニ人間、そしてツバサ大僧正と呼んだコウモリ人間が、それぞれ龍一、風見を囲むように、ゆっくりと回り始める。

「気をつけろ、相葉。こいつらは強い」

「……はい!」

頷いて拳闘の構えを取る。

次の瞬間、ドクトルGが

「死ねィ! 仮面ラァーイダ!」

と叫び、額に付いているパラボラアンテナのような装置を龍一に向けた。

風見が反射的に龍一の頭を掴んで、その場にしゃがみ込む。

光が、彼らの頭をかすめるように通り過ぎた。

少し離れた廃墟にそれは吸い込まれていき……一拍後、放射状に爆炎が吹き上がり、炸裂した。

「な……!」

言葉を失った龍一に、アルズが淡々と言う。

『強力な熱線です。直撃すれば、装甲五まで貫通し、スーツが蒸発すると考えられます』

「来るぞ!」

風見が怒鳴る。

いつの間に空中に飛び上がったのか、コウモリ人間が遥か上空で翼をはためかせ、その場をグルグルと回転し始めた。

「儂の死の高速回転を受けてみよ!」

「蒸発せよ!」

ドクトルGも頭のアンテナを構える。

ツバサ大僧正が、回転しながら「降って」きた。

風見と龍一に向けて急降下する。

龍一はそちらに向けて拳闘……赤心少林拳の「梅花」の型を取った。

彼と背中合わせに、風見がドクトルGに向けて構えを取る。

ドクトルGの額が輝き、帯状になった熱波が地面を抉り、二人のライダーに向けて飛びかかってきた。

「相葉! やるぞ!」

「はい、風見さん!」

二人が叫び、同時に地面を蹴る。

ドクトルGの熱波が二人がいた場所を通過して、はるか遠くの瓦礫に突き刺さり大爆発を上げる。

龍一は自分達に向けて急降下してくるツバサ大僧正に向けて、遥か上空まで軽々と飛び上がった。

そして回転しているコウモリ人間の翼を掴み、体をぐるりと反転させて、回転の勢いを利用してその背中に乗る。

「ツバサ大僧正! 悪いが終わりだ!」

「何ィ!」

「零距離! ライダァァ!」

足でツバサ大僧正の背中を踏みつけながら、両翼を掴んで、龍一は彼ごとその場を回転した。

そして、まるでハンマー投げのような要領で、一回転して、ツバサ大僧正を下に、地面に自らを叩き付けた。

「キィィィック!」

「がああ!」

絞りだすような絶叫を上げ、ツバサ大僧正は、クレーター状に陥没し、衝撃が放射状に広がった地面のその中心で、体を痙攣させて横たわった。

龍一が何度かバク転をして彼から距離を取る。

「仮面ラァーイダ! くっ……」

ドクトルGが、自分に向けて拳を突き出したV3の動きを避け大声を上げた。

「チィ! これを見ろ!」

その手には、爆弾の起動スイッチのようなものが握られていた。

V3が彼から距離を取り、押し殺した声を発する。

「何だ……?」

「我らは、安易で強力な武器を開発中でな! その一端をお見せしよう!」

いつの間に集まっていたのか、戦闘員達が龍一と風見を取り囲んでいる。

それらが羽織っている、ベストのようなものを見て、龍一はハッとした。

あれは……。

もしかして、あれは……。

「貴様ら……」

風見が歯ぎしりしてドクトルGを指さす。

「外道がァ!」

全員、爆薬を搭載したベストを羽織っていた。

「いくら仮面ラァーイダと言えども、これだけの数の『動く爆弾』から、身を守ることは容易では無いだろう!」

「少し見ない間に、ずいぶんと外道になったじゃないか、ドクトルG……」

V3の声を聞き、楽しそうにドクトルGは笑った。

「何、少し現実を見つめなおしただけだ……そういう貴様は、いまだに甘さが抜けきらんらしい……」

「人間爆弾だと……」

龍一は押し殺した声を発して、拳を握りしめた。

「改造人間でも、人間じゃなかったのか! 貴様ら、人間の姿をしてるだけで、もう人間じゃないのか!」

「何を言っている……」

呆れた声を発し、ドクトルGは右手を天に上げた。

「貴様ら、行け……」

「キイィィ!」

甲高い叫びを上げ、戦闘員達が次々と仮面ライダーに襲いかかる。

「仮面ラァーイダを押さえつけろ! 物量ではこっちが圧倒している!」

数十人の戦闘員が一度に襲いかかってきたのだ。

捌ききれずに、龍一は腕を取られ、歯噛みした。

「畜生! 風見さん、どうすれば!」

「脱出するぞ! さすがにこれだけの爆薬の爆発は不味い!」

風見はそう言って手を伸ばした。

襲いかかってきた戦闘員のマスクに指がひっかかり、バリリと音を立ててそれが破れる。

中から出てきた顔を見たのか、物陰に隠れていた正彦が叫んだ。

「お母さん!」

「何だって!」

気を取られた龍一が、十数人の戦闘員に押さえつけられて、地面に磔にされる。

「くっ……隠れていろと言ったはずだ!」

「いいのか仮面ラァーイダ? 貴様らが逃げればあのガキを殺す」

鉄のようなドクトルGの言葉に、風見が歯噛みして動きを止める。

同様にV3も地面に磔にされた。

足から放電しながら、地面を這うようにして、正彦はこちらに近づいてきた。

そして龍一を押さえつけている母に向けて、必死に言葉を発する。

「お母さん! 僕だよ、正彦だよ! お母さん!」

反応はなかった。

既に戦闘員として完全に改造され、意識も、自我も何もかもが失くなってしまっているのだった。

「ククク……ハァーハハハ! これで終わりだァ!」

ドクトルGが高笑いし、手元の起動スイッチを押そうとした瞬間だった。

ドッ。

鈍い音がした。

ドクトルGの背中から胸に、何か棒のようなものが突き出した。

否。

腕だった。

指先までをもピンと伸ばした右腕が、ドクトルGの胸を貫いていたのだ。

「ア……?」

呆然としてスイッチを取り落とし、彼は、腕が引きぬかれ、大穴が空いた自分の胸をかきむしるような動作をしてから、その場に膝をついた。

口笛が聞こえた。

倒れこんだドクトルGの頭を勢い良く踏みつけ、グチャリ、とそれを踏み抜いた男が、口笛を吹いていたのだ。

「この音色は……」

風見が呟く。

口笛が止んだ。

「天が呼ぶ……地が呼ぶ、人が呼ぶ!」

そこに立っていたのは、風見や龍一ととても似た姿形をした男だった。

バッタのような頭部。

そして、筋骨隆々として、はちきれそうなほどにふくらんだ上半身。

おそらく二メートルは軽くこえているであろう、巨体。

背中にはマントのようなものを着用している。

「城茂……? いや、違う……!」

「悪を倒せと俺を呼ぶ!」

ドクトルGの残骸を踏みしめて、彼はよろめきながら起き上がったツバサ大僧正に、ゆっくりと大股で近づいた。

「俺は正義の戦士! 仮面ライダー! ガッツ!」

『ガッツ』と名乗った仮面ライダーは、雄叫びを上げて地面を蹴ると、ツバサ大僧正に、巨体の肩をぶち当てた。

悲鳴を上げて吹き飛んだコウモリ人間に、また地面を蹴り、吹き飛んだ勢いで肉薄する。

そして地面を滑りながら何度も拳を叩き込んだ。

「百烈拳! 喰らえェ!」

「ぐあああ!」

「Finish !!!」

振りぬいたガッツの拳が、ツバサ大僧正の胸を捉え、そのまま天に打ち上げた。

空中に錐揉みに回転しながら吹き上がり、弧を描いて彼が地面に落下する。

何か大量の液体を吐き出し、コウモリ人間は手をタワーの方に伸ばした。

「デ……デストロンに……栄光あれぇ!」

次いで、その体が膨れ上がり、大爆発を起こした。

体内の小型原子炉が爆発したのだ。

「すっげぇ……」

唖然として呟いた龍一を、離れた場所から一瞥し、ガッツは大股で近づいてきた。

戦闘員達が特殊警棒を振り上げ、ガッツに向けて一斉に振り下ろす。

特にガードする素振りも何もなく、また、彼は歩みを止めなかった。

「全然……ッ」

頭を殴りつけられ、胸を殴られ、ついにはナイフで腕や足を突き刺されても、彼は足を止めなかった。

「蚊ほども効かんわ!」

両手を脇に振って、ガッツは戦闘員を振り飛ばした。

そして一人一人、目にもとまらない速度で拳を顔面に叩きこむ。

「相葉! 何をしている!」

戦闘員の拘束を振り払って、風見が怒鳴る。

龍一も拘束を振り払い、拳闘の構えを取ると叫んだ。

「やめろ! この人達は人間だ!」

「お母さん!」

正彦が絶叫する。

彼の母が、ガッツに向けて特殊警棒を振り上げて襲いかかったのだ。

一瞬のことだった。

カウンターの要領で放たれたガッツのジャブが、正彦の母の胸を貫いた。

「お母さぁぁん!」

龍一はその光景を見て、動きを止めた。

否。

動くことができなくなったのだ。

俺は……。

俺達は……。

どうすればいい?

何を守って。

何を救うためにここにいる?

俺は……。



血に濡れた仮面ライダーガッツが咆哮する。

龍一は、それをただ呆然と見ることしか出来なかった。



第4話に続く!!!

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連載小説 マインドスイーパー


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第2話 血の雨の降る景色 前編後編
第3話 蜘蛛の城 前編後編
第4話 蝶々の鳴く丘で 前編後編
第5話 シロイセカイ 前編後編
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