2017-10

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仮面ライダーアルズ 第2話 敵は地獄のデストロン

注:この小説は創作小説です。現存する団体とは一切関係がありません。

バックナンバーは「こちら」から! もしくは、サイドバーのリンクからどうぞ!



仮面ライダーアルズ
……Masked Rider Al-z

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第2話 「敵は地獄のデストロン」

仮面ライダー、本郷猛は改造人間である。
彼を改造したショッカーは、世界征服を企む悪の秘密結社である。
仮面ライダーは、人間の自由のためにショッカーと戦うのだ!!

――「仮面ライダー」より




人間大の巨大な培養槽が立ち並ぶ部屋だった。

薄暗い照明。

薬品の臭いが充満している。

一面に立ち並ぶ、緑色の培養液に満たされた培養槽は、その数だけでも百数個はあるだろう。

そこの中には、それぞれチューブがいくつも差し込まれていて、真ん中に何かが浮いていた。

いや、何か……ではない。

「ヒト」だ。

膝を抱えた全裸の男性が、目を閉じて培養液の中ほどに浮かんでいる。

生きているらしい。

時折、口に挿し込まれたチューブから、ゴポポと水泡が漏れている。

一面、同じ光景だった。

全員同じ大きさ、同じ背格好。

髪型。

顔つき。

そうだ、これは……。

全員――。



「っは……!」

声にならない悲鳴を上げて、龍一は飛び起きた。

初めて見る夢だ。

頭が割れそうな程に、ガンガンと痛んでいた。

頭を押さえて呼吸を整える。

あばら屋の、いつもの部屋。

龍一の部屋のベッドの上だった。

そこで龍一は、着ていたジーンズのポケットからアルズの声がすることに気がついた。

端末を取り出すと、モニターに表示されていた「×」が「○」に変わる。

『血圧は正常のようですが、脈拍が異常値ですね。何か嫌な夢でも見ましたか?』

淡々とそう聞かれ、龍一は端末を膝の上に置いてから、ふーっ……と息を吐いた。

頭にもやがかかったように、強烈な倦怠感が体を襲っていた。

自分が何をしていたのか、明確に思い出せない。

蛾のような人間。

そして、昆虫のようなスーツを着た姿に変容した、自分。

仮面ライダー。

V3の声。

それらの単語が、めまぐるしく脳裏を駆け巡っている。

しかし頭の中でまとまらずに、どれも霧散して消えた。

――そうだ。

「紗代子……」

小さく呟いて、龍一は携帯端末に向けて怒鳴った。

「紗代子はどこだ!」

『リューイチ、落ち着いてください。サヨコ嬢は無事です』

静かにアルズが返す。

『しかし……』

「そこからは俺が説明する」

そこで、ギィ……と扉がきしんだ音を立てて、藤兵衛が顔を出した。

「おやっさん……」

『…………』

口をつぐんだアルズを一瞥してから、藤兵衛は静かに言った。

「大体の話は、そこのプログラムから聞いた。龍一、お前が紗代子を助けたんだってな」

「俺が……? アル、お前、おやっさんは……」

『タチバナトウベエの協力は、あなたの保護に不可欠でした。優先度を鑑みて、要請したわけです』

抑揚を感じさせない声でアルズが言う。

藤兵衛は軽く舌打ちをすると、ベッド前の椅子に腰を下ろした。

「プログラムごときに交換条件を持ちだされるとはな。俺も甘く見られたもんだ」

『…………』

「交換条件?」

龍一がそう聞くと、藤兵衛は苦そうに答えた。

「『それ』から聞いたんだろう。俺が昔、犯罪者だったってな」

「おやっさん……いや……それは……」

口ごもった龍一を見て軽く笑ってから、藤兵衛は続けた。

「その情報は、あながち嘘じゃない。俺は『ショッカー』、『ゲルショッカー』……そして『デストロン』。まだまだあるが……それらの悪の秘密結社と、戦ったことがあるからな」

「デストロン……」

呟いた龍一は、動悸を抑えるように息を吐いてから問いかけた。

「それは一体何なんだ? 俺は、その名前を聞くと、言い表せないようなドス黒い気分になるんだ」

「三十年以上前に滅びたとされる、世界征服を目的とした秘密結社だ。人体改造、破壊、略奪、集団殺人、ありとあらゆる非人道的行為で、世界中を絶望に陥れた」

「世界……征服?」
言葉の単純さとは裏腹の、籐兵衛の重苦しい声を聞き、龍一は言葉を唾とともに飲み込んだ。

「嘘のようだが本当の話だ。世界は、三十年前は今よりももっと混乱していた。各地でそのような秘密結社が続出してな。いわゆる、テロ組織ってやつだ」

「でもおやっさんは、そいつら悪と戦ってたんだろ? なのに何で犯罪者登録されてるんだよ!」

大声を上げた龍一に、籐兵衛は静かに返した。

「お前、『戦犯』って言葉知ってるか?」

「戦犯……?」

「三十年前にいきなりその秘密結社が、殆ど全てなりを潜めるようになったのには訳がある。『バダン』という組織が、大量虐殺兵器を完成させたからだ。無差別に敵であれ味方であれ破壊するそれは、テロ側にも国連側にも甚大な被害を与えた」

「…………」

「俺達は、その兵器を止めることができなかった。組織は壊滅したが、そのせいで沢山の人々が死んだ……俺達は、世間一般からみれば正義の味方でもなんでもねぇ。戦いのせいで、その兵器が作られたって言う奴も多い。国連政府もその一つだ」

「だからって……」

「人間は、誰かのせいにしねぇとやっていけねぇんだよ。そういうもんだ」

どこか寂しそうにそう言うと、籐兵衛は顔を上げて龍一を見た。

「それよりも、紗代子だ」

「そうだ……あいつは無事だったのか?」

「無事だ。だが、発作が起こってな……」

苦々しそうに籐兵衛は言った。

「ここじゃ、鎮痛剤を与えるので精一杯だ。手術が必要だ」

「手術って……ここにはそんな設備は……」

絶句して言葉を失った龍一に、籐兵衛ははっきりとした声で言った。

「そうだ、ここには到底そんな設備はない。だが……」

「…………」

「上層には、どうだ?」

「まさか……おやっさん」

目をむいた龍一に、籐兵衛は軽く歪んだような笑みを発してみせてから言った。

「お前の力と、俺の頭脳があればいける。行くぞ、上層に」



「お前は一体……何なんだ?」

月明かりが砂漠を照らす。

寒さを感じる、真昼とは全く違った空間で、龍一はマントを目深にかぶって空を見ていた。

『あなたと同じです。私には一切の記憶野がありません』

「…………」

無言を返して月を見る。

大気の変動により歪んだ楕円形に見えるそれは、しかしくぐもった光を周囲に撒き散らしていた。

紗代子は、龍一が救出してから程なくして意識を失ったらしい。

発作だと藤兵衛は言っていたが、まだ目が覚める気配がなかった。

聞くところによると、心臓の病だけではないらしい。

早く手を打たなければ、まずい。

それは医療の心得がない龍一にもよく分かることだった。

「でも……おやっさんに、正体を通報しない代わりに俺を保護しろって……そんなことを言わなくても、おやっさんは俺のことを助けてくれたはずだ」

『……それはどうでしょう。リューイチ、あなたはタチバナトウベエのことをどの程度知っていますか?』

「それは……そう言われれば俺は……」

――何も、知らない。

その事実に気がついて口をつぐむ。

「……それより、あのスーツ、また出せるのか?」

『試してみてください』

「分かった!」

頷いて、龍一は立ち上がった。

そして月に向かって端末を掲げ、声を上げる。

「変身!」

『…………』

何も起こらなかった。

ただ風が龍一の頬を撫でる。

「あれ……?」

『やはりそうですか』

「やはりって、何だよ?」

『フレキシブルサイキックアーマー、通称「ライダースーツ」は、あなたのサイキックエナジーと連動して起動、電送されます』

「でも、あの時は確かに……」

『サイキックエナジーは感情によって、爆発的に増大及び減少をします。今の感情状態では、起動に至るまでのサイキックエナジーが足りないのだと思われます』

龍一はため息をついて、その場に腰を下ろした。

「おいおい頼むぜ……これから上層に忍び込もうって時に……」

『私のせいではありません。リューイチ、あなた自身の感情が足りないのです』

はっきりそう返され、肩をすくめる。

「はいはい。もうちょっと追い詰められないと駄目ってことね。でもそれって、イマイチ不安だな……本当に実戦で使えるんだろうな」

『未確認ゆえ何とも断定できません』

そこで龍一は、藤兵衛があばら屋から顔をのぞかせたのを見て立ち上がった。

藤兵衛は医療道具と、眠っている紗代子を乗せた小型の電気ジープを、倉庫の中で起動させているところだった。

「行くぞ、龍一。プログラム」

「分かった、今行く」

龍一は頷いて倉庫に足を踏み入れた。

ライトで照らしながらジープを起動させ、藤兵衛は地図を取り出し、運転席に広げた。

そして乗り込んできた龍一にもそれを見せる。

「紗代子の具合が安定しないから、急ぐぞ。ここから、上層の『タワー』までおよそ五十キロ。ジープをかっ飛ばせば、一時間半ほどで着く。夜中の二時には到着って寸法だ」

「だけどおやっさん、俺さっきもやってみたけど、やっぱり変身できない。見張りの機動隊を蹴散らして、無理やり上層に進入するって、無理があるぜ」

「できる。紗代子を助けたいだろう?」

断言され、龍一は言葉を飲み込んだ。

藤兵衛はドン、と拳で龍一の胸を叩き、言った。

「その気持ちがあれば、変身なんて訳がない。お前は勝てる」

「おやっさんのその自信が、どっからくるのか分かんねぇよ」

「それに、まだ言ってなかったが、上層には何度か物資調達の為に侵入してるんだ。当然見張りがほとんどいないルートも知ってる。タワーには知り合いの医者もいるからな」

「何だ……それを早く言ってくれ」

「正面突破して入るとでも思ってたのか?」

肩をすくめて龍一は助手席に腰を下ろした。

「そうと決まったら、早く行こうぜ。紗代子、危ないんだろ?」

後部座席をのぞき込むと、呼吸が荒い紗代子が寝かされているのが見えた。

「……ああ」

藤兵衛は頷くと、アクセルを踏んでジープを発進させた。

「何だか嫌な予感がしてな……」

「嫌な予感?」

「そうだ。そして残念なことに……俺の予感は、殆ど当たる」



上層は、円形に張り巡らされたスラム街の中心部に存在している、半径わずか五キロほどの、スラム街の一区画にも満たないスペースだ。

そこには全長五百メートル程の長大な『塔』が建てられていた。

地上、地下に伸びるそれは、いわゆるビルのようになっていて、中には建造物が詰まっている。

水道、空調管理されたスラム街とは異なる空間が広がっているわけだ。

機動隊や上層市民はその中で暮らしている。

下層と上層の区別ははっきりしていて、下層市民は、半径一キロ以内に立ち入ってはいけないことになっている。

そこには鉄製の塀が張り巡らされていて、越えれば殺許可が出る、とも聞かされていた。

理不尽。

下層市民からすればまさにその言葉が当てはまる待遇だ。

藤兵衛はジープのライトを消し、極力音が出ないように低速で進むと、地図に丸をつけた区画の、寂れた塀の脇で車を停めた。

見張りもいないが、そこは廃墟となったスラム街の一角だった。

人の気配がないそこの塀は、大きく崩れている場所があった。

「こんなところが……」

龍一がそう言うと、藤兵衛は押し殺した声でそれに返した。

「上層の闇の一端だな。奴らだって神じゃない。ほころびは出るもんだ」

「ここからどうするんだ?」

「下水道に入る。そこから地下に行って、知り合いの医者の設備を借りる」

「分かった」

「お前は、もし見張りに発見されたら……」

そこまで藤兵衛が言った時だった。

『リューイチ、エゾルデ反応です』

アルズが声を上げた。

「エゾルデ……?」

藤兵衛が怪訝そうな顔をする。

『デストロンの改造人間が発する生体パルスです。距離百。複数』

「何だと……?」

二人は顔を見合わせると、青くなってジープの影に隠れた。

「どこだ?」

龍一が声を殺して、端末を顔の前に掲げて、塀の隙間から中に向ける。

しばらくしてアルズは答えた。

『砂漠を巡回しているようです。デストロン戦闘改造体も十二体確認。いずれもエゾルデ反応を発しています』

「戦闘員もいるのか……!」

藤兵衛が歯噛みする。

「こんなところで何を……戻るしかないか……」

龍一は、ジープの後部座席で荒く息をしている紗代子を横目で見た。

そしてマントをたなびかせ、塀の方に歩き出す。

「龍一!」

低い声で呼ばれ、彼は振り返って言った。

「俺が引きつける。おやっさんはその間に、紗代子を連れて下水道に入ってくれ」

「敵は武装してる。ただの人間じゃない!」

「どうやらこっちも、それは同じってね……」

龍一はワインレッド色に拡散した瞳と瞳孔で藤兵衛を見た。

口をつぐんだ藤兵衛の前で、龍一は小さく笑ってみせた。

「俺は……『仮面ライダー』……V3を師匠に持つ、絶対正義のライダーだ」

「お前……記憶が……」

「断片的だけど思い出した。約束したんだ。俺は……弱い者の牙になるって……!」

『サイキックエナジー、急激に増大。白兵プログラムを起動します。オールレディ。フレキシブルサイキックアーマー、電送出来ます』

アルズが淡々と言う。

龍一は、崩れた鉄製の塀の前で、端末を天に掲げて叫んだ。

「変身!」

白い光が彼の体にまとわりつき、一瞬後、それは昆虫のような複眼、そして白黒のボディスーツに変化した。

砂を踏みしめ、異形の姿と変わった龍一は塀の上を見上げた。

「リューイチ、エゾルデ反応がこちらを向きました。応戦してください」

「もう気づかれたのか……!」

押し殺した声でそう言って、地面を蹴る。

暗闇のはずなのに、周りの様子がはっきりと見えた。

軽く踏み出しただけの足は、ものすごい勢いで地面をえぐると、たちまち龍一の体を上へと運んだ。

そのままの勢いで、彼は傾いた鉄製の塀を駆け登ると、塀を一気に飛び越えた。

そして砂を鳴らしながら向こう側……「上層」の敷地内に降り立った。

少し離れた所で、黒尽くめのボディスーツを着た数人の男たちが、徘徊するように歩きまわっていた。

顔は覆面に隠されていて分からないが、手には特殊警棒を持っている。

龍一の目は、その中の一人に釘付けになった。

「なん……だ、あれ……?」

思わず呟いて硬直する。

それほど、見えたその姿は異様だった。

赤い……虎のようにみえる。

猛獣の頭部をしたそれは、両腕がカニのような鋏になっていた。

異形、まさにそう呼ぶにふさわしい姿。

体は大きく、猛獣の毛皮に覆われたそれは、二メートルを超えるだろうか。

龍一の脳裏に、先日の蛾人間の姿がフラッシュバックする。

この虎人間も。

もしかしたら、あのように人間を……。

拳を握りしめる。

白と黒のボディスーツに身を固め、龍一は複眼を赤く光らせながら、瓦礫の影で呼吸を整えた。

塀を越えた先は砂漠になっているのかと思っていたが、そうではなかった。

外と同じような廃墟が広がっている。

はるか向こうにそびえ立つ一つの塔が見える。

『リューイチ、来ます』

アルズの声が耳元で聞こえる。

次の瞬間、龍一は殆ど考えることなく、本能的な動きでその場に一気に屈んだ。

首筋に、悪寒が走ったからだった。

今まで龍一の頭があった場所を、ガチンッ、と音がして何かが瓦礫ごと挟み込んだ。

瓦礫の破片を蹴り飛ばし、少し離れた場所に転がる。

顔を上げると、全長一メートルはあろうかという「鋏(はさみ)」が、瓦礫をバターのように両断している光景が見えた。

いつの間に近づいてきたのか、虎人間がすぐ後ろにいた。

「何なんだ……あれ!」

『デストロンの改造人間だと思われます』

「改造人間って、どういうことだ!」

異常にも程がある、そう怒鳴ろうとして龍一は口をつぐんだ。

黒尽くめのボディスーツの男達……特殊警棒を持った「戦闘員」と藤兵衛が呼んだ者達が、ずらりと自分を取り囲むのが見えたからだった。

虎人間は、鋏をガチン、と開くと瓦礫の破片を脇に放り投げた。

次いで切断された瓦礫が、そこからボコボコと溶岩のように沸騰し、蒸発して消えた。

『あの鋏は、強力な溶解酸を発しているようです。このサイキックアーマーでも、おそらく直撃すれば装甲3まで破られます』

「話し込んでる暇はないってことか!」

声を上げ、龍一は虎人間に対して拳闘の構えをとった。

戦闘員に囲まれているが、違う。

彼の中の何かが、周りの戦闘員よりも、あの虎人間に対して警鐘を鳴らしていた。

「イイィ!」

異様な甲高い声を上げ、戦闘員達が警棒を振り上げ、一斉に龍一に襲いかかる。

背後から振り下ろされた一撃を、龍一はそちらを見もせずにかわした。

そして相手の腕を掴み、ぐるりと体を反転させて、そのままの勢いで背負い、地面に叩きつけた。

毬のように地面を跳ねた男の胸に、考える間もなく拳を叩き込む。

二度砂に叩きつけられた戦闘員の体から、地面に放射状に打撃痕が広がった。

骨が砕ける嫌な感触。

しかし。

――躊躇してはいけない。

心の何処かの記憶が、龍一をまるでマリオネットのように突き動かしていた。

考えている暇がなかった。

一斉に警棒が頭に振り下ろされ、龍一は腕を振り上げてそれを受けた。

両腕に鈍い痛みが走る。

『サイキックフィールドにより衝撃を軽減しました。損傷は軽微です』

「何か武器はないのか!」

『現時点では、「サンダーボルト」が使用可能です』

「使うぞ! 俺の掛け声に合わせろ!」

『了解』

ボディスーツの肩装甲がバクン、と音を立てて開き、凄まじい勢いで水蒸気が噴出した。

龍一は自分に組みかかってきた戦闘員の腹に肘を叩き込み、そして流れるような動きでその顔面を殴りつけた。

戦闘員の顔の骨が粉々に砕け散る感触。

崩れ落ちたそれを投げ飛ばし、龍一は屈んで足を伸ばし、一気にその場を回転した。

襲いかかろうとしていた戦闘員達が足を払われて転がる。

「今だ! 3、2、1……」

『武装「サンダーボルト」を使用します』

右腕が、肘からバチバチと放電のような音を立てて、白い光を放ち始めた。

龍一はその光を、間髪をいれずに、雄叫びとともに地面に叩き込んだ。

一拍後、白い光を叩きこまれた地面から、半径十メートル程の範囲が白く円形に光った。

次の瞬間、ゴウッ、と天に向けて光が走った。

その時間は一瞬だったが、龍一を中心としたその熱は、地面の砂を溶かし、瓦礫を吹き飛ばし、凄まじい勢いで柱となり空の雲に突き刺さった。

数秒後、龍一はボディスーツの各部から白い煙を噴出しながら、赤く円形に溶けた砂の中心で、腰を落とし、目の前に向けて拳闘のポーズをとった。

丁度爆発の範囲のすぐ外に、虎人間が立っていた。

間一髪で逃れていたらしい。

戦闘員達は、放出された膨大な熱量により、火を上げて燃え盛る、無言の躯と化していた。

『残存サイキックエナジー、三十%を切りました。着装可能時間、残り三百秒です。カウントダウンを開始します』

「来るぞ!」

アルズの声を掻き消すように叫んで、龍一は虎人間が、地面を蹴ったのを確認したのと同時にその場に腰を落とした。

そして前を確認もせず、肩口から、急接近していた虎人間の胸にぶつかる。

手を伸ばし、自分の頭を両断しようとしていた鋏を、手首ごと掴んで押し戻す。

「ククク……」

そこで虎人間が、口を開いて笑った。

つばぜり合いのようになりながら、龍一は押し殺した声を発した。

「蛾人間の時と同じだ……会話ができるのか!」

「実験体が完成していたとはな……今更我がデストロンに何の用だ?」

「実験体……? どういう意味だ、化け物め!」

「化け物……ククク……ハァーッハッハハ!」

虎人間は不意に高く笑うと、足を伸ばして龍一の胴体を蹴り飛ばした。

よろめき、そのままバク転の要領で、龍一は突き出された鋏をかわして距離をとった。

「なるほど。お前には我々がそう見えるのか。てっきり『同志』だと思ったんだがな」

『着装限界まで、あと二百四十秒』

アルズの淡々とした声が聞こえる。

「同志……? 化け物に知り合いはいねぇ!」

「丁度いい。相葉博士の遺品を持ち帰れば、私にも不死の身体をいただけるかもしれん! 貴様は溶かさず、四肢をバラバラにして持ち帰ってくれよう」

虎人間が、両手の鋏を上に向けて、強く振った。

鋏の内側から金属音を立て、鋭い刃が競り上がる。

『着装限界まで、あと二百秒』

「どうやら難しく話してる時間はないようだ……」

龍一はそう言って、右手を伸ばし虎男に向け、腰を落とした。

「一つ聞いておくことがある。人間は……美味かったか?」

低くそう問いかける。

虎人間は少しの間きょとんとしていたが、やがて裂けそうな程口を開いて、喉を鳴らし笑った。

「あぁ……私は脳髄が好きでね。特に子供の……女の子の脳髄は甘くて……旨いなぁ」

「……二つはっきりしていることがある。一つは……デストロンは俺の敵ということと……」

虎人間が雄叫びを上げ地面を蹴り、空中に飛び上がる。

「俺は、貴様らのような異形を許さない、絶対正義の『仮面ライダー』ということだ!」

『武装「サイキックナックル」を使用します。サイキックエナジー増大。三十、五十、ナックルフルチャージ。撃てます』

虎人間が空中から、落下の速度そのままに腕を突き出す。

それを龍一は紙一重で首をひねって避けた。

刃が頭部の一部を削りとって通過する。

頭に鋭い痛みを感じる間もなく、龍一は落下してきた虎人間の胸に、青白く光る右拳を、体全体の重みを込めて、流れるように叩き込んだ。

拳が、炸裂した。

衝撃の瞬間、青白い光が爆発したのだ。

その爆発は虎人間の体を、まるで花火のように上空二十メートル近くまで軽々と打ち上げた。

絶叫を上げて、血反吐を吐き散らしながら、きりもみに回転して虎人間は宙を舞い……。

そして、体内の小型原子炉が潰れたのか、空中で轟音と、一瞬昼間かと思うような閃光を上げ、爆散した。

『サイキックエナジー、残存ありません。着装を強制解除します』

アルズの声が聞こえ、膝をついた龍一の体がスーツごと白く光る。

一拍後光が消え、龍一は汗だくになりながらその場に両手をついた。

心臓が破れそうなほど脈動している。

右手に握りしめた端末から、しかしアルズの無機的な声が響いた。

『今の爆発で、この区画に警備が集まってくると思われます。ここを離れなくてはいけません』

バラバラと虎人間の残骸が、肉片、骨、何だかよくわからない機械など……それらが地面に落下してくる。

「離れるって……どこに……?」

『タチバナトウベエの提示した地図をスキャンしておきました。上層区画に通じる下水道が近くにあります。ナビに従い避難してください』

「わ、分かった」

どもりながらそう答え、龍一は立ち上がり、力が入らない足を抑えるようにして歩き出した。



「斥候にやった改造体が、やられたようですな……」

「やはりこの反応は……」

「仮面ライダー……」

電気もついていない真っ暗な部屋の中に、四人の人影があった。

全員が黒いマントとフードを目深にかぶっており、その表情は伺い知れない。

一人がその単語を呟くと、周囲に緊張が走った。

「『V3』か……?」

「奴は死んだはずだ。だからこそ我々は、この地での再生を選んだのだ……」

「監視映像が到着したようだ……確認を」

一人がそう言って計器を操作すると、壁のスクリーンに、丁度、拳で虎人間を破壊する龍一の姿が映し出された。

「おお……」

「これは……」

四人の男たちがそれを見て絶句する。

「新しいタイプの『仮面ライダー』だと……?」

「しかしこれは……紛れも無く、あの……」

「ああ。コードネーム、『ストロンガー』の『電パンチ』だ……」

一人の男が進み出て、フードの奥の瞳を、怪しく赤く光らせた。

「私が行こう」

「ほほう……ヨロイ一族が、ここを仕切るか……」

「我ら『新生デェーストロン』の敵は、排除しなければならない……ここ、ジャパンシティでの再興計画の障害になる者は、消しておくに限る。それとも……ツバサ一族が出るか?」

「ククク……我らが出るまでもなかろう」

いやらしい声で、ツバサ一族と呼ばれた男が笑う。

進み出た男は、マントをなびかせてそれぞれに背を向けた。

「もしもこの『仮面ライダー』が、今までのタイプの特性を持っているとすれば、厄介だ……潰しておくに限るだろう」

「改造体は出すかね?」

「いらん」

喉を鳴らし、男は笑った。

「あの程度ならば、私一人で問題はない」



「おやっさんは無事に下水道に入れたのか……?」

押し殺した声で、龍一はアルズに問いかけた。

アルズは少し沈黙した後、それに返した。

『分かりません。混乱に乗じて侵入できたと考え、私達も後を追うしかないと思われます』

「派手にやり過ぎた……これ脱出する時どうするんだ?」

『…………』

歯噛みして、龍一は足元の砂を踏みながら、ライトを前に向けた。

乾いた臭いがする、円形の巨大な水道管の中だった。

今は使われていないのか、水は流れていない。

頭上でバタバタと何かが走り回っている音がした。

おそらく、先ほどの戦闘員達なのだろう。

アルズがエゾルデ反応を感知していることからも、そう予測できる。

「……どうしてデストロンの改造人間が、上層区画をうろうろしてるんだ?」

そこで龍一は、低い声で胸の奥にくすぶっていた疑問を絞り出した。

てっきり機動隊がいると思っていた。

しかし現実、中にいたのは異形の化け物と……戦闘員。

『分かりません。しかし……』

「…………」

『……仮定の話になりますが、このシティは、デストロン勢力に、秘密裏に制圧されてしまっているのではないのでしょうか?』

一拍置いてアルズがそう言う。

龍一は唾を飲み込んで、それに返した。

「つまり……上層はもうデストロンの残党が……」

『はい。でなければ、あれだけ堂々と行動している理由にはならないと思われます』

「上層の市民は無事なのか……?」

そう呟いて、龍一はハッとした。

「おやっさん……! 中に知り合いがいるとか言ってたな。おやっさんと紗代子が危ない!」

『急ぎましょう。タチバナトウベエは片足が義足です。追いつけると思います』

「ああ、急ぐぞ!」

下水道の中を走りだす。

しばらく走ると、行き止まりになっている脇に錆びついたはしごが見えた。

その上のマンホールが開いている。

「ここから出たのか! 追うぞ!」

短いはしごを登ると、龍一は地図が示していた上層区画の中に出た。

そこは、スラム街とは全く異なった空間だった。

舗装された道路。

整った町並み。

「何だ……ここ……」

唖然として呟く。

街灯に照らされたそこは、あまりに綺麗で……そして、残酷なほどに別世界だった。

ほんの少し離れただけで、こんなにも違う生活環境。

空調が効いているのか、空気は寒くも暑くもなく、クリアだ。

砂の気配はない。

しかし、建物の中だということを嫌でも思い出される程に、天井が低かった。

三メートル弱くらいしかないだろうか。

アルズが沈黙しているのを見て、龍一は端末を覗きこんだ。

「おい、こっちでいいのか? おやっさん達はどっちだ? 中の地図もスキャンしたんだろ?」

『リューイチ、引き返してください』

「あぁ? 何でだ。折角侵入できたんだし……」

『罠です。この一帯に、一切生命反応がありません』

「何……?」

『改造人間のエゾルデ反応多数。囲まれています。加えて、サイキックエナジーの回復に、あと三分程必要です。チャージ後、ここは屋内のため、アーマーの転送をするには現在位置のスキャンを行わなければいけません。つまり、即座に変身ができません』

一切生命反応がないって、どういうことだと聞き返そうとして口をつぐむ。

視界に、特殊警棒を持って腰を落とし、自分を取り囲むように輪を作った戦闘員達が近づいてくるのが見えたからだった。

建物の影から、続々と溢れるように黒尽くめの戦闘員が出現する。

「この人数……」

次いで

「イィィ!」

という声とともに、龍一が出てきたマンホールから、数人の戦闘員が躍り出る。

『退路を絶たれました。非着装状態での戦闘は危険です。着装可能まで、残り二分四十秒。なるべく電波状態がいい場所に移動してください』

「くそっ……!」

毒づいて走り出す。

そして龍一は、考える間もなく、正面の戦闘員に肩口からぶつかった。

まるで鉄のような衝撃が体を襲った。

跳ね返されはしなかったものの、戦闘員ともつれ合ってその場に転がる。

そのまま、龍一は包囲網を背に、必死に街中に向かって走りだした。

「何だっ……あいつら、えらく硬いぞ!」

『アーマー着装状態と非着装状態では、あなたの力には天と地ほどの差があります。戦闘は避けてください』

「何でお前そんなに冷静なんだ!」

中の道路は、螺旋状になっているようだった。

タワー型のこの上層内を、ぐるぐると巻くように取り囲んでいる。

上に向かっているのは明らかだった。

藤兵衛達は、地下にいるはずだ。

「畜生……おやっさん達と離れちまう……」

『着装可能まで、残り二分です。やはりこの一帯に、「人間」の生体反応がありません』

「人間がいないってことか?」

龍一はそう怒鳴って、建物の影に滑り込んだ。

天井の通気口から、数人の戦闘員が躍りかかってくる。

その突き出された拳を身を捻って避ける。

戦闘員の拳は、そのまま舗装された道路に突き刺さり、砕け散らせた。

「ちっ……まだか!」

『残り一分三十秒。耐えてください』

「このままじゃ殺されるぞ!」

青くなり、飛びかかってきた戦闘員に蹴りを叩き込んでから、龍一はあることに気がついた。

やけに戦闘員の背丈が、バラバラだ。

子供くらいの大きさの者もいれば、龍一よりも大きな者もいる。

――まさか。

まさか……。

デストロンは。

その事実に気がついて、龍一は思わずその場に足を止めた。

『リューイチ、危険です。走り続けてください』

「改造人間って……人間を改造することだよな……」

『逃げてください。着装可能まで、残り一分です』

躍りかかってきた戦闘員が、警棒を振り上げる。

それにしたたかに頭を殴られ、龍一は地面に叩きつけられた。

『リューイチ!』

アルズの声が響く。

しかし龍一はそれに構わず、頭から血を流しながら、戦闘員の足に組み付いて引き倒した。

そしてもがくそれのマスクをむしりとる。

そこで彼は、息を呑んで背後に飛び退った。

マスクの下にあったのは。

機械がところどころに埋め込まれ、まるで別の生き物のようになってしまった……。

男性の、人間の顔だった。

顔からパイプやランプが飛び出していて、瞳は正気を失ったようにグルグル動いている。

視点が定まっていないのに、体は動いている。

その異様さは筆舌に尽くしがたいものがあった。

「まさか……デストロンは、上層市民を全員改造したのか!」

悲鳴のような声を上げる。

その龍一を、多数の戦闘員達が警棒を構えながら取り囲んだ。

『着装可能まで、残り四十秒』

「ククク……ハァーハッハッハ!」

そこで龍一は、少し離れた道路からけたたましい笑い声が聞こえたのを耳にして、そちらに向けて拳闘の構えをとった。

「誰だ……!」

戦闘員達の動きが止まる。

「いかにも。このシティに住む愚民共の、三分の一は既に、我ら『新生デェーストロン』の崇高なる兵士として、人体改造の礎となっている」

黒いマントとフードを目深に被った男が、建物の影から顔を出した。

『着装可能まで、残り三十秒』

「仮面ライダー……新しいタイプか。何の目的があるのか分からんが、一人で乗り込んでくるとは馬鹿な奴よ」

「お前は……!」

「我が名は『ヨロイ元帥』……新生ヨロイ一族の長なり!」

戦闘員達が、いきなりバラバラと散って龍一から距離を取る。

ヨロイ元帥と名乗った男は、フードを音を立ててむしりとり、マントを脇に放った。

カニのような兜を被った、大柄の男だった。

体には異様な色の鎧を着込んでいる。

左腕は巨大な鉄球になっている。

異形。

まさに異形の姿だった。

「上層の人達を……改造したのか!」

「ククク……それがどうした? 見たところ貴様も『実験体』の一人のようだな。相葉博士の遺品か。興味深い……」

「俺のことを知っているのか!」

『着装可能まで、残り十秒、九、八……』

カウントダウンを始めたアルズ端末を握りしめ、龍一は歯を噛んだ。

「丁度いいぜ……化け物! てめぇをぶっ飛ばして、あらいざらい吐かせてやる!」

「威勢がいいな……ガキが……」

ニマァ、と不気味に笑い、ヨロイ元帥は続けた。

「そういうのは、嫌いではないが……死ね。処刑の時間だ」

地面を蹴ったヨロイ元帥の姿が消えた。

唾を飲んだ龍一に、鈍重な外見とは思えない速度で肉薄し、彼は腕の鉄球を、龍一の脳天に向けて振り下ろした。

『着装できます』

「変身!」

携帯端末を掲げて叫ぶ。

龍一の体に白い光がまとわりつき、一瞬後、彼は再度昆虫のような頭部、そして白黒のボディスーツに身を包んだ。

振り下ろされた鉄球を両腕で受ける。

すさまじい衝撃が体を襲い、それは足を伝って地面に突き刺さると、放射状に舗装された地面を砕いて、破裂させた。

「ぐああ!」

悲鳴を上げて、龍一はそのまま道路を突き破り、一階層下まで吹き飛ばされた。

地面に大穴があいていた。

下の階層の建物に、屋根から突き刺さり、水道管をぶち砕きながら、龍一は背中から壁に叩きつけられた。

「うっ……」

衝撃で目がかすむ。

舌を切ったらしく、マスクの奥の口の中に血の味が広がった。

『損傷率十%。サイキックフィールドを貫通しました。受け続ければ危険です』

「どうした仮面ライダー」

天井の穴から、下にドサリと降り立ち、ヨロイ元帥は笑った。

「V3はこんなものではなかったぞ」

「戦ったことがあるのか……風見さんと!」

よろめきながら起き上がった龍一を見て、ヨロイ元帥は喉を鳴らした。

「風見志郎……たしかそんな名だったな。正確には私が戦ったのではないのだがな……」

「どういう意味だ!」

「それを貴様に教える必要はない。なぜなら貴様は……」

地面を蹴り、まるで車のような速度で彼は龍一に肉薄した。

「ここで死ぬんだからな」

首を掴まれ、龍一の体が宙に浮く。

そのままの勢いでヨロイ元帥は、人一人を片手で持ち上げて、壁に叩き付けた。

そして地面を蹴り、龍一の背でコンクリート製の壁をぶち破った。

「ぐはあ!」

体中がバラバラになりそうな衝撃が龍一を襲う。

首を掴まれているので、息ができない。

ヨロイ元帥は龍一の首を掴んだまま振りかぶると、まるで野球のボールのように、彼の体を上空に投げ飛ばした。

そしてその場で体を反転させ、自由落下してきた龍一の胸に、空気を切って唸りを上げた鉄球を叩きつける。

『いけない! サイキックフィールド、全開にします』

アルズの声と間髪を置かず、受け身もとれなかった龍一の胸に、鉄球が抉りこまれた。

そのまま砲丸のように、龍一は一直線にその階層の天井に突き刺さった。

「うわああああ!」

わけも分からず絶叫する。

天井を砕いてぶち抜け、彼はそれでも足りず、一つ上の階層の天井に衝突し、合成コンクリート製のそこに半ばまでめり込んで止まった。

内臓が破れたのだろうか、口の中に血の味と鉄の味が一気に広がった。

胸に穴が開いたかのように、感覚がなかった。

遅れて体中から力が抜け、赤い複眼からフッ、と光が消える。

龍一の体は、標本台に磔にされた虫のように、ベリ……と合成コンクリートから剥がれると、力なく眼下の地面に崩れ落ちた。

(俺は……)

声が出ない。

視界がぐるぐると回っている。

目の端に、ヨロイ元帥が地面の穴を飛び越えて、こちらの階層に降り立ったのが映る。

瓦礫を踏みしめながら近づき、彼は龍一の頭を掴み、万力のような力を込めながら持ち上げた。

「終わりだ。『実験体』ライダー」

(絶対正義の……)

『鉄球の周りにサイキックエナジーを確認。先ほどの攻撃によりアーマーが七十五%損傷しています。再構築が必要です。フィールド全開により、サイキックエナジーダウン。残存五十%です。リューイチ、抜けだしてください。次喰らえばアウトです』

冷静なアルズの声を聞きながら、龍一は力が入らない腕に、全身の力を込めようとして失敗した。

(仮面ライダー……)

――お前は、力無き者の牙となれ!

風見の声が、頭の中に反響した。

光が失われていた複眼が点滅し、赤く、強い光が漏れだした。

「俺は……」

頭を砕かんばかりの力で握りしめられ、持ち上げられながら、龍一は絞りだすように言った。

「仮面ライダーだ……」

「んん? 恐怖で狂ったか?」

怪訝そうな顔をしたヨロイ元帥を睨みつけ、龍一は血反吐とともに言葉を叫んだ。

「絶対正義の! 仮面ライダー……仮面ライダー十一号! 『アルズ』だ! ヨロイ元帥……貴様を殺す!」

龍一の右足が、バチバチと放電しながら青白く輝き始めた。

「これは……ちぃ!」

舌打ちをして、ヨロイ元帥は龍一の頭をとっさに離した。

その今まで顔があった場所を、人間離れした動きで半回転し、振りぬいた龍一の右足が通過する。

そのまま龍一は腕を伸ばして地面を掴み、三段跳びの要領で空中に躍り上がった。

『サイキックウェーブ反応、急激に増大。三十、五十、八十……撃てます』

「ライダァァ!」

「『電キック』か!」

天井を蹴って、きりもみに回転しながら、龍一は光となった。

「反転! きりもみィ!」

「何……!」

一筋の流星が、ヨロイ元帥が振りぬいた鉄球に突き刺さる。

「キィィィック!」

「ぐぅううう!」

歯を噛み締めてその場に身を屈めたヨロイ元帥の足元、その地面が砕け、流星の勢いにまかせて一つ下の階層、いや……二つ、三つ、四つと次々に螺旋状の道路を吹き飛ばして抜ける。

合計五つ、直線距離にして二十メートル以上も落下し、龍一は止まった。

吹き飛ばされたヨロイ元帥が、壁に鉄球を打ち当てて体勢を立て直し、地面に滑りながら着地する。

『サイキックエナジー、残存ありません。電送を解除します』

白い光が霧散し、龍一の体からボディスーツとヘルメットが消える。

吐いた血でどろどろになった顔で、龍一はまっすぐヨロイ元帥を睨みつけた。

二人の間を乾いた風が吹く。

「お、俺は……俺は……」

「…………」

「貴様らのような……悪を……あ、悪を……許さん……!」

震える手を伸ばし、龍一は指を立ててヨロイ元帥を指した。

「覚えておけ……俺は……絶対正義。正義のライダー……『仮面ライダーアルズ』だ……!」

そこまで言った龍一の目が、ぐるりと暗転し白目をむく。

ドチャリと力なく地面に崩れ落ちた龍一を、足を踏み出してヨロイ元帥は見下ろした。

そして鉄球を振り上げ、彼の頭に振り下ろそうとする。

しかし、その動きが止まり……。

次の瞬間、ヨロイ元帥はゴブッ、と青い液体……血液のようなものを吐き出した。

手でそれを拭い、彼はうつ伏せに倒れている龍一を見下ろし、ニィ、と笑った。

「仮面ライダー……アルズ。十一号か。面白い」

足を踏み出し、ヨロイ元帥は龍一の脇を通過して、背後の暗闇に溶けこむように消えた。

「嫌いではない……」



「藤兵衛、こいつか……?」

「ああ。良かった。まだ息はあるようだな……」

藤兵衛と、もう一人壮年の男性の声がした。

龍一は、ゲホッ、と喉の奥にたまった血液を吐き出し、水から引き上げられたかのように荒く呼吸をした。

「はぁ……! はぁ!」

「落ち着け。無理に喋らずとも良い」

「お……やっさん……」

霞む視界の端で藤兵衛を見て、龍一は手を伸ばして彼の服の襟を掴んだ。

そして力の限り引き寄せる。

「さっ……紗代子は……!」

「お前が敵を存分に引きつけてくれたお陰で、先ほど無事に、地下の施設で手術が終わった。問題はない」

「…………」

藤兵衛の襟から手を離し、龍一は地面に大の字になって、呆然と砕けた天井を見上げた。

完敗だった。

何故、自分が生きているのか。

分からなかった。

「くそ……」

「龍一、お前……」

「話はそこまでだ。龍一とやら、意識があるんなら立てるか? すぐにここから離れないと、デストロンに見つかる」

そこで隣に立っていた、長身の白衣を着た男が割り込んだ。

そして震える龍一の手を掴んで引き起こす。

『タチバナトウベエ、私の回収を忘れないで下さい』

地面に転がっていたアルズ端末から声がする。

藤兵衛は舌打ちをすると端末を拾い上げ、龍一のポケットにねじ込んだ。

「おやっさん……俺……」

「無理をするな。とにかく移動だ」

「俺に掴まってくれ」

白衣の男が龍一の手を掴み、肩に回す。

「どこに……」

「薄々分かっていると思うが、上層はほぼ完全にデストロンに占拠されている。俺達は、地下の隔離シェルターに隠れて、ここを脱出する手段を講じていた」

男がそう言って、龍一の顔を覗きこんだ。

「そんな中、外からお前たちが現れて大暴れを始めたという訳だ。監視カメラの映像を見ていたが、デストロン幹部と戦って生き残っているとは驚きだ」

「幹……部?」

「坂城、行くぞ」

藤兵衛がそう言って、少し離れたところのマンホールの中に身を躍らせる。

「くそ……体に力が入らねえ……」

「無理してでも動け。今何かに襲われたら、皆殺しだ」

「……分かった」

頷いて、倒れるように龍一はマンホールの中に体を滑り込ませた。



薄暗い照明と、据えた臭いが充満する狭い空間だった。

塹壕を彷彿させる、白い壁に囲まれた正方形の部屋。

隔離シェルターは、それがいくつも連なってできている。

その内の一つ、医療室と書かれた部屋の中に、龍一は寝かされていた。

体には点滴がいくつも刺されていて、呼吸器も口に取り付けられている。

「……驚くべき回復速度だ」

坂城と呼ばれた白衣の男は、カルテを見ながら押し殺した声で言った。

壁に寄りかかった藤兵衛が、持っていた煙草にライターで火をつけてふかす。

「内臓破裂に骨折十五ヶ所。即死していてもおかしくないが、わずか一時間でほぼ完全に『傷』が消えた。藤兵衛、こいつは……」

「ああ、まぎれもない『改造人間』だ」

煙草の煙を吐き出しながら、藤兵衛は呟くように言った。

「どこで見つけた?」

「…………」

「だんまりか」

口をつぐんだ藤兵衛に、苦々しげに坂城が言う。

「ここまでかき乱しておいて、それはないだろう。脱出の手はずは整っていたんだ」

「脱出したとして、どこに行くつもりだ?」

静かに問いかけられ、坂城は口をつぐんだ。

「国連に連絡した。しかし、国連軍がここに到着するまで、最低でも三日はかかる。外に出たとしても砂漠に阻まれて、追い詰められ皆殺しがオチだ」

「ならどうしろと言うんだ! 奴らの……デストロンの力は、日に日に増していくばかりだ。幹部までもが降りてきた。このシェルターにいる百五十七人の生存者を、どうやれば守りきれる!」

「俺たちに任せろ」

タバコの煙をフーッ、と吐き出し、藤兵衛は言った。

「こいつはライダー。絶対正義の仮面ライダーだ。ここで、新生デストロンを壊滅させる」



見知った顔が近くにあった。

大事な人。

好きだった人。

俺の、世界で一番必要だった人。

――真名。

その名前を呼んだ。

父さん。

そして……。

唐突に、視界が水の中に石を投げ入れたかのように歪んだ。

真名。

その名前だけを残して、頭の中からあいつの顔が消えていく。

そのぬくもりも。

声も。

何もかもが消えていく。

俺は……。

だが、俺は……。

龍一は頭を抑え、そして虚空に向けて絶叫した。



「…………ここか」

小さく呟き、一人の男が砂漠の中、大型のバイクに跨っていた。

白いフルフェイスのヘルメットをかぶり、その表情は伺い知れない。

「相葉。死ぬなよ……!」

アクセルを吹かし、砂上だというのに、猛スピードでバイクは走りだした。

その視線の先には、無数に広がるスラム街。

そして、遥か彼方にそびえ立つ塔。

ジャパンシティの姿が映っていた。



第3話に続く!!!

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第2話 血の雨の降る景色 前編後編
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第4話 蝶々の鳴く丘で 前編後編
第5話 シロイセカイ 前編後編
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